第26章 交差する想い
「あっ!こ、このくらいで良いよね?ね?」
いつまでもこうしてる訳には、ね。
俺的には・・・残念だけど。
腕を緩め解放すると、スガさんになんて報告するのかと聞かれ、それは任務完了かな?と答えると、城戸さんはまたも微妙な顔を見せた。
『が、頑張って下さい、報告』
「えっ?急になに?!」
『菅原先輩になんかされそうになったら・・・逃げて下さい!』
スガさんに何かされそうになったら?
・・・嫌な予感が浮かぶのを、必死で抵抗する。
「あ、あぁうん!よく分からないけど、そうするよ!・・・城戸さん、戻って来る・・・?よね?」
俺が最後にポツリと言った言葉に、曖昧に笑みを返された。
『縁下先輩。おじい様、どうかお大事になさって下さい』
優しいなぁ、ホント。
「じゃ、俺は学校に戻るよ」
『はい。縁下先輩、行ってらっしゃい』
「行ってらっしゃい、か。じゃ、行ってくる」
少し寂しそうな笑みを浮かべ、見送られる。
行ってらっしゃい。
そのひと言が、俺の心をほっこり暖かくした。
そのままの心で、学校に戻れると思っていたのに。
エレベーターのドアが開くと、そこには母さんとばあちゃんだけが乗っていて。
母「あらぁ、力じゃない?この階に彼女がいるの?・・・って、ここ小児科病棟よね?」
面倒臭いと思って、その話題をスルーする。
母「まさか力、アンタ・・・小学生に・・・」
「なんでそうなるんだよ!!俺は変態か?!」
母「だって、ねぇ?おばあちゃん?」
「違うっつーの!1コ下だって・・・事情があってここの階なんだよ。もうホントうるさい」
祖母「力・・・チューはして来たか?」
「なっ・・・」
予期せぬ方向からの攻撃に思わず顔が熱くなる。
そんな事はしてないけど!
・・・それに近い距離感ではあったかも知れない。
ふわふわの髪に、長いまつ毛に・・・女の子らしい甘い香りと肌の柔らかさ・・・に。
・・・じゃあなくて!!!
やめろ!
止まってくれ俺の思考!!
落ち着け俺!
母「あらあら~?力、顔が真っ赤よ?もしかして?ね、もしかして??」
「してないっての!ちょっと抱きしめただけ、・・・ヤバッ」