第10章 烏野高校男子バレー部
【 コート上の王様 】
そんな異名で呼ばれ、アイツの上げるトスをまともに打つ仲間も減っていった。
そんな人が同じクラスになるなんて、前途多難だなぁと思いながら桜太にぃと歩く。
「どうした?新しいクラスでなんかあった?」
急に黙り込んで歩く私を心配したのか、ちょっと屈んで桜太にぃが顔を覗く。
私は、なんでもないよと笑って、明日からの高校生活を考えながら家までの道のりを長く感じながら歩き出した。
翌日、私のちょっと派手めの見た目のせいなのか、クラスのみんなはあまり近づいては来なかった。
何となく休み時間を潰しては授業を受け、お弁当の時間になると1日教室に閉じこもってるのも退屈だと思い、お弁当箱の入った手提げを掴むと1人廊下に出て、中庭を目指した。
早足で歩き始めると、途中、肩を掴まれ呼び止められた。
「おい、オマエ・・・城戸、だよな?」
名前付きで呼び止められ、肩を掴まれたままぎこちなく振り返る。
私を呼び止めた相手を、確認して驚いた。
影山飛雄・・・なぜこの男が・・・驚きながらも、名前を呼ばれた事に返事をする。
『そう、だけど・・・』
「北川第一中の、城戸だよな?」
『はぁ・・・だから、そうだって。何度も何度も確認しないでよ・・・』
「お前・・・」
影山が何かをいいかけた時、周りが何やらヒソヒソ話始めた。
« 何アレ、ケンカとか? »
« 女子の肩を鷲掴みとかヤバくね?»
周りの話が聞こえたのか、影山は掴んでいた私の肩口を解放した。
私は改めて影山に向き合うと、話の続きを待った。
「チッ、お前ちょっと来い」
周りが気になるのか、影山はそう言うと私の手を掴み急ぎ足でズンズンと歩き出す。
『あ、ちょっと!』
私と影山とでは、かなりの体格差がある。
それなのにズンズン歩かれてしまうと、私は歩いてついていくと言うより小走りを続けている状態で、目的地も分からず引っ張られ続けた。
「ここらでいいか」
ボソッと言うと、影山は急に立ち止まり私の手をパッと離した。
今までずっと小走りの状態で手を引かれていたのに、急に手を離された事でバランスを崩し、影山の背面にそのまま突っ込んでしまった。
「オイッ!しっかり前見とけよ!」
『そっちこそ!急に止まったりするから!』
鼻の頭を押さえながら負けずと叫ぶ。