第8章 つかの間の休息
兄妹だけの新しい生活が始まり、家事をこなしながら受験勉強などをしていると、日々の時間は瞬く間に過ぎ去り、やがて入試も終わってしまう。
この日のために色々な時間を費やして来た私は、ホッとしたのもつかの間、1日の大半を手持ち無沙汰のまま終えてしまう日々が続いた。
明日は合格発表か・・・
ベッドに寝転がり、ぼんやりと天井を見た。
ただ何も考えずに両手でクッションを跳ねあげる。
空に舞い、手元に落ちて来るクッションを、また、跳ねあげる。
手元に落ちて来るクッションを抱きしめ、何度か寝返りを打つ。
目線の先に、いつの間にか端に追いやられたボールがポツリと佇んでいた。
しばらくボール・・・触ってなかったな・・・
ベッドから起き上がり、ボールを拾い上げる。
『埃っぽい・・・』
ボールを触らなくなってから、どれくらいたっただろう。
よしっ!
意を決して私はひたすらボールを磨き始めた。
静かな部屋にキュッとボールを磨く音だけが響く。
私はジワリと浮き上がって来る汗を拭うと、ボールを持って上にかざしてみる。
« 特にセッターは、いつでもボールを触っていた方がいいよ?»
及川先輩の言葉が浮かんだ。
『久しぶりに、やってみるかな・・・』
1人そう呟いて、私は部屋を出た。
ありがたい事に兄達も小さい時からバレーをやっていた事もあり、家を建てた時に我が家の地下には両親がコート1面分の体育館設備を作ってくれていた。
リビングにあるキーケースから鍵を取り出し、当直明けで寝ている桜太にぃを起こさない様に地下へ降りていった。
しばらく使っていなかったから、それなりに埃っぽいのを予想して扉を開けると、予想を反してきれいに掃除がされていた。
なんで?誰が?
そう思いながら、床をモップがけをして、ゆっくりと時間をかけてアップする。
じゃ、やりますか。
やりますか、とは言っても自分1人しか居ないからボール使うと言ってもせいぜいサーブ練習くらいしか出来ない。
コートの反対側に空のペットボトルをいくつか並べ、サーブ練習を始めた。
あれ?全然当たらないや。
狙い通りにボールが飛ばない事に少し苛立ちながら、何度も何度も打ち込む。
やがて汗だくになって来た事も気にせずサーブを打ち込み続けていると、感覚が戻ってきた。