第8章 つかの間の休息
年が明けてしまうと時間の流れは一段と早くなり、新学期が始まる前に両親は辺境の地へと旅立って行った。
私たち3人が空港まで見送ると、父は何度も何度も私の頭を撫でてはため息をつき、母は時間が来るギリギリまで私との会話を途切らせる事なく続けていた。
そんな両親との時間を過ごしながら、やはりどこかで寂しいと思っていたのか、両親に対して上手く笑うことが出来なかった。
兄達2人は、私の事は自分達がしっかり見守るから大丈夫だと伝え、最後にはそれぞれが軽く抱き合いゲートを抜けて行く両親を見守っていた。
少しずつ小さくなっていく後ろ姿を、私は見えなくなるまでずっと見ていた。
桜「寂しい?」
いつまでも動き出そうとしない私に、桜太にぃが問いかける。
『別に?お父さん達がずっとやりたかった事だし、私が反対する権利なんてない・・・』
慧「強がっちゃって」
『強がってなんかないし!』
慧『へぇ~、パパママ待ってぇ~って顔、バレバレなのに?』
『違うし!慧太にぃのバカ!』
桜「慧太はすぐそうやって紡に絡む」
桜太にぃが間に入り、私たちの言い合いをさり気なく止める。
慧「ま、何があってもオレ達がお前を守るけどな」
桜「うん、そうだね」
2人の言葉に、なぜか照れくさくなった私は両手を広げてそれぞれと腕を絡ませ、
『お腹すいたから帰ろ?』
なんて言って歩き出す。
2人の兄はお互い顔を合わせ笑い、慧太にぃは
慧「食い気の方が優先かよ」
と言ってゲラゲラ笑いだし、桜太にぃは
桜「またそうやって慧太は・・・」
とため息をもらす。
私に寂しさを感じさせない様に振る舞う2人の言動が、とても嬉しかった。