第8章 つかの間の休息
ボールを上手く打ち込み事が出来ると、だんだん面白くなり休む事も忘れてのめり込んだ。
転がっていくボール拾い上げ、ペットボトルを元の位置に戻した所で、
「紡?そろそろ休憩しない?」
急に声をかけられ驚きながら声のした方を振り返ると、そこには腕を組ながらドアに寄りかかっている桜太にぃが笑っていた。
『桜太にぃ・・・ゴメン、起こしちゃった?』
「そんな事ないよ?目が覚めてキッチンに水飲みに行ったら、ここの鍵がないし、降りてきたら紡がいたから見てた」
『えっ、いつからいたの?』
「う~ん・・・ボールがあらぬ方向に飛んでる時くらいかな?」
そんな前からいたなんて、全然気が付かなかった。
「声をかけようと思ったんだけど、あまりに夢中になってるからさ」
そう言いながら中へ歩いてくると、タオルを手渡された。
「久しぶりのボールは、どう?」
柔らかく笑みを浮べながら、桜太にぃが聞いてくる。
『しばらくサボってたから、全然。でも、やってるうちに段々と感覚が戻ってきて、楽しくなって来ちゃって時間が経つの忘れてた』
そっか、と相槌をうち、桜太にぃは笑った。
「紡はさ、ホントはバレーやりたいんじゃないの?・・・って、今のを見ていて俺は思ったんだけど、どう?」
突然の発言に俯いてしまう。
確かにずっとやって来たバレーは好きだし、でも・・・。
私はふぅっと息を吐いた。
『バレーはやらないよ。もう。決めたことだから。体動かすくらいなら、家でやるけど』
チラリと桜太にぃを見ると、何か言いたげな顔で私を見ていた。
『そうだ!桜太にぃも一緒にやろうよ?私1人じゃサーブ練習くらいしか出来ないし、反対側入ってよ』
それ以上いろいろ聞かれるのを断ち切るように言うと、桜太にぃは笑いながらドアに向って声をかけた。
「だってさ、慧太」
再度驚きドアの方を見ると、そこには難しい顔をした慧太にぃがいた。
『慧太にぃ帰ってたんだ・・・』
慧「今日は仕事は午前だけのシフトだったから、たまにはのんびりしようと思ったんだけどな。・・・紡。オレを巻き込むなんて、手加減しないぜ?」
『負けません!!』
メラメラと闘士を燃やしながら答え、3人で汗だくになるまでボールを追いかけた。
それが3人のコミュニケーションが取れた、楽しい時間だった。