第26章 交差する想い
ひゃぁぁ、怖い、怖すぎる!
慧太にぃ助けて!
心の中で助けを呼んでも、どうにもならない事は分かってる。
分かってるケド!!
桜「何も言わないなら、もういい」
そう言って立ち上がる桜太にぃの腕を捕まえ手引き止めた。
『ドアの前にいたのは、自分でお膳片付けたかったから。昨日から横になってばかりだったから、少し歩くのは平気かと思って。だけど、やっぱり足が痛くて、でも。あと少しだから行けるかな・・・とか、思って。えと・・・勝手に動き回って、ごめんなさい・・・』
捕まえた腕を振り払われるのが怖くて、一気にひと息で話す。
・・・まだ、怒ってるかな?
ギュッと閉じていた目をこっそり開けると、桜太にぃが口元を押さえて震えだした。
桜「ゴメン、そんなに怖かった?」
笑ってる?!
なんで?!
桜「ちょっとお灸を据えようとしただけなんだけど・・・紡があまりにもビクビクするからっ・・・おかしくて・・・」
さっきまでの怖さが一気に抜けてしまい、ポカンとしてしまう。
『怒って・・・ないの?』
桜「怒ってるよ?でも・・・紡が反省したの分かったから、いいよ」
怒ってるんじゃん!!っと、ツッコミたかったけど、桜太にぃの笑いが止まらずに言うのをやめた。
ポンっと頭を撫でられ、そこに違和感を覚えた。
なんか、昨夜までと少し違うような気が・・・
感じた違和感を確かめるように、桜太にぃをジッと見ると、その違和感の理由がすぐにわかった。
『桜太にぃ、今日は白衣じゃないんだ?』
最後に見た時までは白衣姿だったのに、今は上下が水色の、白衣とは違う格好をしていて、それが違和感の正体だった。
桜「あぁ、これ?これはあんまり好きじゃないんだけど・・・仕方なく。昨日は救急搬送が立て続けていて、何度も着替えたから替えの予備が無くて」
『何だかそれ着てると・・・歯医者さんみたい』
桜「そこなんだよなぁ。病棟の子供達が、怖がらなきゃいいんだけど・・・子供って歯医者は好きじゃないからね。泣かれたりしなきゃいいんだけど」
ため息混じりに言って、桜太にぃは時計に視線を落とした。
桜「外来に行くのに、そろそろ慧太が来るはずなんだけど・・・」
『え?!なんで?!私1人でも行けるけど?』
診察の為に、わざわざ慧太にぃを呼ばなくても、私そこまでお子様だと思われてるの?!