第26章 交差する想い
桜「その足で1人で動き回れないし、1度家に帰った時に慧太が休み取ったからって言うからさ。俺は病棟から抜けられそうもないしね」
そんな話をしていると、ドアをノックして慧太にぃが入って来た。
桜「噂をすれば・・・だね」
慧「ウワサ?」
桜「慧太が紡の事を大好きだ、って話」
桜太にぃの言葉に、自分の事を話していたとは思っていない慧太にぃが、何の話だ?なんて言いながら笑う。
『休んだ話だって・・・店長代理なのに急に休み取ったとか聞いたから』
慧「あぁ、その話ね。いーのいーの。紡がケガして救急搬送されたって言ったら、みんなが仕事休んで病院行け!って」
『捻挫・・・なのに?』
そもそも救急搬送される事になったのは頭を打ってるからって事で、そっちは昨夜のうちに大きなたんこぶ以外は無事が判明してる。
慧「それも話したけど、病院で1人でいると心細いだろって逆に説得されて、ま、そゆこと」
そゆこと・・・って。
何ともいえないモヤっとした感じで慧太にぃを見上げると、ニコリと返された。
ふぅ・・・と小さくため息を吐くのと同時に、控えめなノックが聞こえ、私より先に桜太にぃが返事をする。
ー おはようございます。城戸さーん、外来に行く時間・・・あら?城戸先生、こちらにいらしたんですか? ー
昨夜からいる看護師さんが、桜太にぃを見て笑いながら言った。
桜「回診の前に、ちょっと顔見ようかと思って」
ー 城戸先生は妹さんが気になって仕方ないのねぇ?私も夜勤で常駐してたのに、私より城戸先生の方が何度も様子見に来て・・・ ー
車椅子を用意しながら、看護師さんがふふふっと笑っていた。
桜「あ、主任?!それは言っちゃダメなやつ!」
軽く慌てる桜太にぃを見て、慧太にぃがニヤリと笑う。
慧「ほほぅ・・・どうやらオレより桜太の方が、だな?」
桜「いや違うって!俺は紡が急変したら困るからってだけで!」
慧「公私混同?」
桜「慧太!」
2人のやり取りを聞きながら、看護師さんは私のバイタルチェックを終え、車椅子へと促した。
ー 支えてますから、ゆっくりで大丈夫よ?慌てないで、ゆっくりね ー
さすがにさっき1人で歩いて痛みが増したとは言えず。
しっかりと支えて貰いながら車椅子に腰掛けた。
ー では、外来までご案内します。貴重品は大丈夫ですか? ー
