第8章 つかの間の休息
紡ちゃんちって凄いねって言おうとして振り返ると、まっつんが仲良く楽しそうに紡ちゃんと話すのを見て思わず間に入った。
すると短時間であるにも関わらず、随分と仲良くなっている2人はタッグを組み、紡ちゃんに至っては
『及川先輩は・・・私のお父さんですか?』
なんて言って笑う。
えぇ~、お父さんっていうより、どっちかっていうとオレは・・・なんて邪な思いを押さえつけ3人で笑いあった。
そして、そろそろ行こうか?とお兄さんに呼びかけられ、紡ちゃんは帰って行った。
ガサガサと音を立てる袋を持ち体育館へ歩いているとまっつんが、« なぁ? »とオレに声かける。
「ん~?」
松「あの子・・・紡ちゃんだっけ?さっきから思ってたんだけと、もしかして岩泉の彼女って、あの子か?」
「なんでそう思うのさ」
松「いや、確か夏の終わりの合宿の時、岩泉のLINE見てお前が言ってただろ?確かあの時の名前も紡ちゃんって言ってなかったか?」
まっつん鋭い。
ってか、半年近く前の些細な事を覚えてるなんてオレは驚きだよ。
「・・・元、だよ」
松「あ?元ってなんだ?別れたのか?」
「あんまり詳しくは分からないけど、まぁ・・・」
別れた真相は言わなかった。
いや、正しくは言えなかった、だろうか。
松「ほ~ん?別れてフリーって事は、周りがほっとかねぇだろうな。特にお前とかお前とかお前とか?」
ニヤリと嫌な笑いを浮かべて、まっつんが言う。
松「ま、あんなイケメンでハイスペックな兄ちゃんがそばに居たら、流石のお前にもなびかないワケだ」
「そんな事は、これから先は分からないよ?」
オレも負けずと言い返すと、まっつんは続ける。
松「へぇ~、強気だな。狙ってんのか?でも、フリーなら俺も参戦しようかな?何だかあの子、ほっとけない感じで、顔も可愛いし、胸はデカいし?おいしそうな感じだし、今度電話でもしてみるか。」
「ちょ、ちょっと!ゲスな言い方しないでよね!・・・ん?・・・って言うより、いつの間に連絡先交換なんてしたのさ!!」
オレが叫ぶ様にいうと、まっつんは
松「まぁねぇ~」
とニヤつきながらオレを見た。
・・・敵が増えた。
そう確信しながら、オレは体育館へと足急いだ。