第25章 追憶
桜「俺達、産まれた時からずっと一緒で、兄弟って言っても、そもそも双子だし。友達の家に弟が産まれたとか妹が産まれたとか、そういうのがずっと羨ましくて、父さん達に懇願した事もあるんだ。誕生日もクリスマスも、プレゼントはいらない、妹が欲しい!って」
・・・お願いって。
そんな事、お願いされた方だって、きっと困惑するよ・・・
桜「だけど、俺達がどんなに頼んでも誕生日やクリスマスのプレゼントは違う物だったし、2人で諦めかけたクリスマスの日に・・・サンタクロースから手紙付きのプレゼントが届いたんだよ」
『サンタクロースから手紙?』
そう返すと、桜太にぃはその時を思い出す様な目をして頷いた。
桜「そう、サンタクロースからの、ね」
『その手紙には、なんて書いてあったの?』
桜「これが最後のプレゼントだよって。どんな事があっても、大事にする事。何が起きても、守り抜く事。それから、プレゼントはお父さんとお母さんに聞きなさい。って」
『どういう意味か分からないんだけど・・・』
微かに眉を寄せながら桜太にぃに言うと、桜太にぃは穏やかな顔をして続けた。
桜「もちろん、俺も慧太もその意味が分からなかったから、すぐに父さん達に聞いたんだ。そしたらさ、母さんがそっと取り出して見せてくれたのが・・・母子手帳だった」
『それって・・・』
桜太「そう。母さんのお腹の中に、紡がいるって証明するものだよ。プレゼントは紡だったんだ。その意味を聞いた時に、俺達はホントに嬉しくて嬉しくて、慧太と2人で飛び跳ねて喜んだよ」
私・・・桜太にぃと慧太にぃに、そんなに待ち焦がれて産まれてきたんだ・・・
鼻の奥がツーンと痛くなるのを我慢して、瞬きを繰り返した。
『なんか、桜太にぃと慧太にぃが飛び跳ねて喜ぶとか、想像つかないよ?』
桜「それは今の姿で考えるからだよ。さすがにこの歳でそんな喜び方したら・・・ねぇ・・・慧太はやりそうだけど」
桜太にぃの言葉に思わず笑ってしまう。
確かに慧太にぃなら、今の歳でも飛び跳ねて喜ぶとか・・・やりそう。
桜「その後はもう、俺達は頑張っちゃったよ」
『頑張っちゃったって、何を?赤ちゃんだった、私のお世話とか?』
お父さんもお母さんも、いつも忙しくて留守がちで、だから私の子守りとか、きっと大変だったんじゃないかと思った。