第25章 追憶
岩 “ 明日の診察の結果が分かったら、教えて欲しい・・・ ”
「・・・え?」
てっきり、日向の事とかチームの事とか聞かれると思っていた俺は、予想外の事に間が抜けた返事をしてしまう。
岩 “ 無理にとは言わない。けど、パッと見でも結構腫れてたし・・・その、アイツの事が、気に・・・なるから ”
ドクンと音を立てて、まるでダッシュをした後の様に鼓動が跳ねる。
岩泉さんは、城戸の足の事が気になると言っているんだ。
多分、きっと。
なのに、なんだ?
この、重く、息苦しい感じは・・・
「そ、れは・・・足のケガが気になるって事ですか?・・・それとも・・・」
言葉に出してしまってから、後悔が押し寄せる。
電話の向こうの岩泉さんは、ずっと無言で。
その時間が長い程、俺は息苦しさを・・・増していく。
岩 “ 影山。お前はもう知ってるんだろ?俺達は、もう・・・。だから俺は、せっかく歩き出したアイツを、足止めする様な事はしねぇよ ”
どう答えたらいいのか分からず、今度は俺が黙り込んだ。
岩 “ アイツは・・・強いよ。こういう結果にしたのは俺なのに、文句ひとつも言わず、責め立てもしない。でも・・・もし、何かあったら。助けてやってくれ・・・頼む ”
城戸の事を強いと言いながらも、何かあれば助けてやれと言う言葉は・・・岩泉さんが城戸の弱い部分をよく知ってるからこそ、言える事だ。
「岩泉さん・・・俺からもひとつ、聞いても良いですか?」
岩 “ なんだ ”
「いまでも・・・」
俺は・・・何を聞こうとしている?
今でも大事だと思っているのか?
今でも大切だと思っているのか?
今でも・・・好きだと、思って・・・
喉まで出かかっている言葉を、無理やり飲み込む。
「いえ・・・・・・・・・何でもないッス・・・」
岩 “ そっか・・・じゃあ、頼むな? ”
「はい、じゃあ・・・」
そう言い交わして、通話を切った。
ハァァァァァァァ・・・
肺の中の酸素がゼロになるまで息を吐く。
今の・・・なんだったんだ?!
周りが静かだったし。
誰もいないところから俺に電話して来たのか?
・・・それほど、城戸が気になったのか?
岩泉さんのさっきの感じ。
ただけが人を心配してた感じじゃなかった。
もっと・・・なんか・・・
・・・城戸はなんて言ってたか?