第25章 追憶
「それより岩泉さん、俺に電話してくるとか、なんか用事があったんじゃないんですか?」
岩 “ ・・・あぁ・・・ ”
岩泉さんは、ひと言だけそう言って、沈黙の渦を巻く。
今日のこのタイミングで、岩泉さんが俺にコンタクトを取ってくるって事は、多分・・・
いや、きっと城戸の事が聞きたいんだろう。
このまま岩泉さんが話し出すのを待つべきか。
それとも、俺から話を振る方がいいのか・・・
ただ、静かな時間だけが過ぎていく。
岩 “ 影山・・・アイツ、の、事だけど・・・ ”
「・・・城戸、ですか?」
そう返すと、岩泉さんは、あぁ・・・、と答えた。
岩 “ うちのコーチから、頭を打ったことは無事だって聞いた。当事者としては、心底ホッとしたよ・・・ ”
俺が知ってる岩泉さんとは少し違った、穏やかな感じのする言葉に戸惑った。
「城戸は、足以外は大丈夫です。検査の後、目が覚めるまで俺は側にいました。だから、大丈夫です」
別に張り合おうとは思ってはいない。
だけど、何となくモヤモヤする気持ちが沸き上がり、言わなくてもいいのに側にいたのは俺だと・・・そう、言ってしまう。
岩 “ そうだったよな。病院まで付き添ったのは、影山だったんだよな ”
「まぁ・・・後から先生とか、澤村さんとかも駆け付けてくれたんで、俺ひとりだけって事でもないッス。城戸のお兄さんもだし」
側にいたのは俺だ・・・という主張をした後ろめたさからか、そんな情報まで話してしまう。
岩 “ 澤村・・・?あぁ、烏野の主将か。それならアイツも心強かっただろうな。仲・・・良さそうだし ”
「仲?・・・は、いいと思います。名前で呼びあってるくらいなんで」
なんで・・・そんな事を聞くんだろう。
別に、同じチームの主将とマネージャーが仲がいいだとか、普通じゃね?
城戸は・・・まぁ、正式なマネージャーではないにしても。
そんなことを考えながら、何となく答えた。
岩 “ そう、か・・・大事にされてんだな、アイツは・・・それならいいんだ・・・ ”
「はい、大事には・・・されてると思います。部活中は城戸も楽しそうにしてました」
俺がそう言うと、通話の向こうから安堵の息が聞こえてきた。
「岩泉さん・・・俺への用事って・・・」
岩 “ あぁ、もうひとつあるんだが・・・ ”