第25章 追憶
「どうせ、誰かと井戸端会議でもしてて忘れたんだろ。めんどくせーからムリ」
突き付けられた千円札を押し返し、クルリと背を向けた。
母「あっそう。じゃあいいのね?行かないのね?別に私はいいんだけど~?今日、飛雄の好きなポークカレーなんだけどなぁ?」
うっ・・・ポークカレー・・・だと?
母「卵がないと温玉作れないんだけどなぁ・・・?私はいらないから別に構わないんだけどぉ?飛雄もいらないって事でいいのね~?」
「卵と・・・麦茶でいいんだな?」
玄関に鞄を放り込み、さっき押し返したばかりの千円札をひったくる。
母「あら?行ってくれるの?じゃ、ヨロシク~」
夕飯がポークカレーなんて聞かされたら・・・行かねぇワケには・・・
クソッ・・・丸め込まれたみたいで腹立つ!
でもこれは、俺のポークカレー温玉乗せの為だ!
母「気を付けて行って来てね~!あ、他にも思い付いたら電話するから!」
後ろでピーピーうるさい母さんに、背中を向けたまま片手を上げる。
1日の最後の最後がパシリかよ。
俺は今日、朝から怒涛の1日だったんだぞ!
学校行く時に城戸の様子が変で気になるし。
朝練の時も城戸の様子が変で気になるし。
昼休みだってそうだ。
武田先生と話し込んでるから先に弁当食べたら眠くなって。
目が覚めたら城戸はいねぇし、どこいったんだとか気になるし。
放課後は放課後で、誰だか分かんねぇ先生に呼び出し食らって、武田先生が城戸に留学の話がとか言うから気になるし。
いざマイクロ乗れば隣でスースーと無防備に寝るから気になるし!
寝顔が可愛いとか、気になるし!
寝惚けて抱き着いてくるから・・・
あ、いや、それは別にいいケド・・・
違う!そうじゃねぇよ!
ケガは隠すし、倒れるし!
いろいろ気になってたんだよ!!
救急車の中じゃ、国見がとか言うから気になるし?!
あぁ、そうだ!!
病院じゃ、よく分かんねぇケド月島の手ェ握って離さねぇし!!!
ムカつくし!!
・・・あぁぁぁぁぁ!
考えれば考えるほど城戸の事ばっか考えてる1日じゃねぇか!!
俺はストーカーかよ!!
勢いよくしゃがみ込み、両手で頭を掻きむしりながら気持ちを落ち着かせる。
なにやってんだよ、俺は。
なんでこんなに城戸の事ばっかり・・・
確かに・・・アイツの事は。