第25章 追憶
~ 影山side~
慧太さんに送ってもらい、自宅に着く。
お礼を言って車を降りかけた時、あらかじめ連絡をしていた為か、慌ただしく玄関から母さんが飛び出して来た。
母「お帰り、飛雄」
「・・・あぁ」
適当に返事を返す俺の背後で、慧太さんが車から降りてくる音が聞こえた。
慧「すんません、帰りが遅くなりまして。紡の兄の、城戸 慧太です。今日は影山君にウチの紡が大変お世話になりました」
丁寧に深々と頭を下げられ、母さんも、いいえ~なんか言いながら頭を下げた。
母「・・・それで、妹さんのご容態は?」
慧「はい。いろいろと検査はしましたが、頭の方は問題ないようです。一応念の為と言うことで、今夜は入院扱いですが・・・」
母「入院、ですか・・・それはそれで、大変ですね・・・」
慧「あ、いや。病院の方にはもう1人の兄がいますので、その変は心配はないかと」
母「あぁ!そうね!あの、イケメンのお兄さん!」
「ちょっ、おいっ!!」
いまここで言うセリフじゃねぇだろ・・・
慧「本人が聞いたら喜ぶと思います」
母「お兄さんが着いていらしてるなら、安心ですわね」
・・・ですわね?
普段そんな言い方した事ないのに、何気取ってんだ。
慧「それでは、時間も遅くなりましたのでこの辺で失礼致します」
母「妹さん、お大事になさって下さいね」
慧「お気遣いありがとうございます。それでは・・・」
慧太さんの車が角を曲がっていくまで見送り、家に入ろうとした。
母「はぁ・・・紡ちゃんのお兄さんは、ほんっとにイケメンねぇ。惚れ惚れしちゃうわ。私ももう少し若かったらねぇ・・・」
何が、もう少し若かったら・・・だよ。
「・・・半世紀くらい若くねぇと、釣り合わねぇし」
「飛雄!!!」
ヤベッ・・・さっさと家入ろ。
母「あっ!待ちなさい!」
鞄を掴まれ、前に進むのを阻まれる。
「危ねぇな、なんだよ」
軽く睨みを効かせながら振り返ると、目の前に千円札を突きつけられた。
「なに?くれんの?」
母「そんな訳ないでしょ。はい、これでひとっ走りスーパーで卵買って来て。あと麦茶もね」
はぁぁ?!
「なんで俺が!!そんなの買い物行った時に買って来いよ!」
母「そうなんだけどねぇ・・・忘れちゃったの」
忘れちゃったの・・・じゃねぇだろ!