第25章 追憶
及「オレの胸に?」
はぁ?!
岩「当たり前だ!他に誰がいるんだよ!」
前から分かってたケド、アホだろコイツ!!
しかも腕まで組んで考え込んでやがる。
及「・・・岩ちゃん?とか?・・・あ、ごめんなさい、スミマセン・・・岩ちゃんその顔ヤメテ!!怖いから!」
及川のアホさ加減について行けず、睨みだけを向けた。
溝「及川うるさい!!」
及「なんでオレだけ・・・」
お前が1番騒がしいんだろうが!!
構わず及川の首根っこを掴んで、無理やり後ろに下がらせた。
及「ぐぁ・・・い、岩ちゃん、ギブ!首閉まってるから!ギブ!!」
「あぁ?!うるせぇ!いっそ息の根止まった方が静かになるんじゃねぇのか?」
及「わ、わかった!静かにするから!ホント!お願い!!」
ジタバタ暴れる及川をパッと離してやると、大げさに肩で息をして見せた。
溝「全く。あと、急な事だが明日の放課後はここの体育館の設備検査が入る事になったから、明日の練習は朝練だけだ。放課後は体育館入室禁止らしい。連絡は以上!」
「「ッス!!お疲れっしたァ!!」」
・・・明日、放課後は練習ないのか。
部室に入り、着替えをしながら明日の事を考える。
もし・・・もしも、入院が長引くようなら。
少しだけなら、顔見に・・・
いや、ダメだ。
万が一にも、烏野の主将と鉢合わせたりでもしたら。
だが、俺は今回の紡のことに関して、当事者と言えば、当事者だ。
1度くらい、少しでも、いや、5分だけでも・・・様子を見に行くくらいなら・・・
俺は・・・何を恐れているんだ?
具合いはどうだ?
そう言って、訪ねて行けばいいだけじゃねぇか。
そこにもし、誰かがいたとしても。
普通に、会いに行けばいいだけだろうが。
なのに・・・
なぜ、それだけの事に・・・戸惑うんだ・・・?
「クソッ!らしくねぇ・・・」
及「ん?岩ちゃん何か言った?」
らしくねぇ・・・って、なんだ?
じゃあ・・・
「俺らしいって、なんだ?」
及「え?岩ちゃんらしさ?」
しまった・・・声に出てたのか?!
「なんでもねぇ、気にすんな。忘れろ」
ロッカーの鏡に向かってネクタイを締めながら、そう返した。
及「岩ちゃんらしさ、ねぇ。そんなの、ひと言じゃ言い表せないよ」
忘れろっつったべや・・・
しっかり考えてんじゃねぇよ。