第25章 追憶
だいたい紡は、自分ではちょっとだけ甘えたがりとか言ってんけど。
実際は本人の自覚がないだけで、かなりの甘えん坊だし。
・・・それはそれで、そういう紡が可愛いと思う俺もいるんだけど。
思わず口元が緩み、慌てて隠す。
『寂しい時は、誰かにくっついてないと死んでしまう病なの』
そんな事を言う紡に、腹抱えて笑い飛ばした事もあるしな。
どんな病気だよ!って。
アイツ・・・超絶甘えん坊だし、ウルトラ天然だし、鈍感だし。
ホント、飽きないっつうか。
でも今は、影山と同じ烏野にいるんだよな・・・
あ。
なんかそれ考えたら影山にムカついて来た。
今日だって紡にベタベタベタベタしてた。
抱き抱えたり、抱きしめたり。
・・・ふざけんな。
家も近いし。
影山のヤツ、絶対・・・紡の事、好きだろ。
ポーカーフェイス気取ってたって、俺には分かる。
影山、紡といる時は見た事ないような顔しやがる。
金田一みたいにあからさまなのもイラッと来るけど。
まぁ、紡が鈍感過ぎて金田一も哀れだけどな。
あんだけ好き好きオーラ出してんのに、紡はお友達の仲良しの延長だと思ってるからな。
・・・それは俺も一緒か?
あぁ~、クソッ!
金田一と俺が同じライン上だと思うと余計イラッとする!
及「お~い、2人とも?いつまで床磨きしてるのさ?」
チッ・・・。
出たな、エロフェミニスト。
「は~い、今終わらせま~す」
バレッタをポケットに突っ込み、金田一を促して残りの面積をダッシュでモップがけする。
「金田一、負けた方が肉まんな」
金「え?マジ?!言いながら走るとか国見ズリぃぞ!」
及「終わったら集合してねぇ~」
「「っす」」
走る速度をグイグイと上げて、金田一を置き去りにする。
「うっし!金田一、帰り肉まんな」
ゼェゼェと息を切らす金田一に言って、2人分のモップを片付けた。
金「国見お前、鬼だろ・・・痛っ!!」
ボソッと漏らす金田一に鉄拳を食らわせながら集合の列に入った。
及「みんな揃ったね~?じゃ、始めようか」
気が抜けるような話し方で、今日の総評や今後の方針、そんな事を話し出す。
今日の総評ったって、アンタ殆どいなかったじゃん。
やっと戻って来たと思えば、紡に絡むし。
あぁ、そうか。
このエロフェミニストも紡狙いだった。