第25章 追憶
うっ・・・釘刺された。
キッチンは桜太に任せて、オレは連中とバレーしてようと思ってたのに。
「へいへい、手伝わせて頂きますよ。で、今日はどうする?軽く寿司屋でも行く?」
『あー、ホントにずるーい!!』
「お前行っても海苔巻きばっかりじゃねぇかよ」
『だってあれはママが!・・・あ、え~っと・・・』
「ママが?なんだって?」
ニヤリと笑って、紡の顔を覗き込んだ。
『お、お母さんが、いつも作ってたから・・・』
お母さん、ねぇ。
なんだかんだ言っても、寂しいんだろうな。
甘ったれだし、紡は。
「よーし、わかった!寂しがり屋の妹を抱きしめてあげよう!」
『ぎゃっ、急になに?!キモイ!うざい!ジョリジョリしないで!!』
嫌がる紡を閉じ込め、わざと髭を当てる。
「お前、優しいお兄ちゃんに酷いこと言うなぁ」
『ホント無理!タバコ臭い!桜太にぃ助けて!あ!!プリン零れたじゃん!!』
桜「慧太はすぐそうやって構うんだから・・・」
呆れ顔の桜太も、そう言いながら止めに入らないのは、紡の言葉が聞こえてたんだろう。
紡?
父さん達がいない寂しさは、オレと桜太が埋めてやるから。
だからお前は、いつも通りの甘ったれで、わがまま放題で元気に過ごせ。
オレ達以上に紡を守れるやつが現れる時までな。
・・・とりあえず、いま急に彼氏なんか連れてきたら。
1度はぶっ飛ばさせてくれ。
オレ達の宝物を大事に出来るか見定めてやるから。
そんくらいは、いいだろ?
な、紡?
そんな日が来たら、桜太も穏やかに笑ってられねぇよな?
準備が終わった点滴をトレーに乗せて振り向く桜太に、オレはニヤリと笑いかけた。