第25章 追憶
立ち聞きしてた、なんて知れたら。
オレの立場はメチャクチャ危うい・・・よな?
桜太にしても、紡にしても。
・・・何やってんだろうな、オレは。
小さくため息をつき、ドアノブに手を掛けた。
桜「残念でした。でも、腕が自由になる様に場所は変えて貰うよ。じゃ、いったん外すね?」
「おぉ、やっと点滴終わったのか?」
今着いたばかりを装って、部屋の中へと入る。
『もう1回、点滴あるって・・・』
うんざりした顔で紡が言って、桜太が仕方ないじゃん?と返すのを見て、オレは少しばかり大げさに笑って見せた。
『あと慧太にぃ、ドアは静かに開け閉めしてよ。ここ、病院なんだからね?』
「はいはい、分かりました。ほれ、影山送って戻る時にお前が食えそうな物とか買って来たから」
紡の手に、袋をそのまま持たせてやる。
『・・・こんなにたくさん?』
「桜太?紡は飲食はどうなってんだ?」
桜「あぁ、お腹いっぱいに食べなきゃ大丈夫だって。病院の食事は明日の朝から」
カルテを見ながら点滴の用意をする桜太が、背中を向けたまま答える。
「じゃ、平気だな。紡、1度に全部食うなよ?」
『食べないよ!!もう!・・・あ、ミルクプリンだ』
怒りながらも袋を覗き、好きな物を見つけてニコニコ笑顔になる紡を見て、こういう所は小さい頃から変わんねぇんだよなぁ、と笑う。
「紡、特別に食べさせてやろうか?」
『イヤ』
「即答かよ」
『だって慧太にぃ、絶対半分くらい食べちゃうんだもん。だからイヤ』
返ってくる答えが分かっていながらも、つい、反応か面白くて・・・構いたくなるんだよな。
ホント、可愛い妹だよ。
「ところで桜太、今日は当直か?」
桜「違うけど?」
「じゃ、泊まりか?」
桜「紡の事は気になるけど、家には帰るよ。ここは完全看護だし、紡が落ち着いたら帰れって上から言われてるし。なんで?」
「いーや、別に。時間も時間だし、飯食って帰るか?帰ってから作るとか、桜太も大変だろ?」
桜「なんで俺が作る設定なんだよ」
いや、今日の当番は桜太じゃん?
オレは明日だし?
『外ご飯ずるーい・・・』
「お前は治ってからな。そしたらアレだ、部の連中をみんな家に連れて来い。今日みんなに世話になった礼に、桜太が振る舞ってくれるからよ」
桜「慧太もだよ?」