第25章 追憶
~慧太side~
影山を送り届けて、玄関から出て来た影山の母親に挨拶をして車を走らせる。
病院まで後少しで着く信号まで来て、行きつけのスーパーの看板に目が止まった。
救急搬送だったから、晩飯・・・ないんだろうな。
ふとそんな事を考えて、スーパーの駐車場に車を入れた。
桜太から連絡貰った時は、いつも飄々と見せてたオレも、さすがに肝が冷えたよ。
心配・・・させやがって。
ハンドルに突っ伏し、大きく深呼吸をする。
つくづく、桜太が医者でいてくれて良かったと思う。
オレ達が入り込めない場所でも、紡についててやれるからな。
その反面・・・
なぜ、オレは医者を目指そうとは・・・思わなかったんだと、後悔もする。
両親共に立派な医者で、双子でありながら長男の桜太も、医者を目指して進学した。
周りもてっきりオレも医者になるんだろうと思っていて。
でも、オレは・・・医者にはならなかった。
別に成績がどうのとか、そういう問題じゃない。
目指そうとは思えば、目指せたのに。
オレは、そっちの方向には進まなかった。
桜太と、比べられるのが・・・嫌だったからだ。
だから、違う土俵を自ら選んだんだ。
双子って、何かと比べられるんだよな。
一卵性だと、尚更。
同じ性別、同じ顔。
ただそれだけで、人は比べたがる。
桜太はこうだけど、慧太はこうだな、とか。
同じ、ひとつの卵から産まれただけなのに。
いつも、比較されて来た。
紡も、だな。
やたら桜太には懐いてるし。
いや、まぁ、兄妹なんだから仲が悪いよりは、仲がいい方がいいんだけども。
桜太の甘やかし方は神業的だから、紡がベタ甘えするのも仕方ねぇケドな。
桜太が叱る時は、物凄くビビるくせによ。
オレに対しての紡は、言わばアレだ。
三枚目的な扱いだな。
ちょっとふざけながら紡に構うから、そうなっちまったんだな。
歳の離れた妹が可愛い・・・ってのは、桜太もオレも、同じハズなんだけどよ。
乾いた笑いを漏らしながら、車を降りる。
紡、何がいいんだろうか。
そもそも、飲食しても平気なのか?
・・・分かんねぇ。
とりあえず、今夜は食えねぇとしても明日の朝とかに軽く食べられる物を考えてやるか。
「飲み物も、いるよな?」
ブツブツ言いながら、店の中を歩く。