第25章 追憶
ー 周りをよく見て下さい。背中を貸してくれる人は、あなたにはたくさんいます ー
『武田先生からの・・・』
桜「これってさ、きっと澤村君達の事なんじゃないかな?もちろん、彼だけじゃなくて、バレー部全員の事だと思うよ?先生も含めてね」
メッセージを読み返し、みんなの顔を1人ずつ思い浮かべてみる。
こんな私でも、待っててくれる人達がいる。
そっか・・・
ごちゃごちゃ考えなくてよかったんだと言った、日向君の言葉を思い出す。
私も、日向君と同じだった。
『桜太にぃ、あのね?』
桜「分かってる。でもまずは、足が治ってからだよ?」
『うん!』
桜「よし、元気出たね?俺も、変な話を持ち出して悪かった。なんか・・・なんだろうなぁ・・・ちょっと、余裕、なくしてたかもな」
小さく息をつき、桜太にぃが天井を見上げる。
『余裕って?』
桜「ん?・・・内緒。それからさ、さっきの事だけど、無理に忘れたりしないでいいと思うよ。良いことも悪い事も、思い出は思い出。それは紡の中に大切にしまっておけばいいんだから、ね?」
良いことも・・・悪い事も・・・か。
『うん・・・そうする。でも私、もったいない星人だから、少しずつになるかも』
それでいいんだよ、と、桜太にぃが笑う。
桜「さて、点滴もいい感じで終わったから、新しいものに付け替えますかね」
『えっ?!まだあるの?!』
桜「だって、先生の指示でそう書いてあるからね。さすがに先生の指示となれば、俺にはどうにも出来ません、と」
妙にニコニコする桜太にぃを軽く睨んで、せっかく繋がれた腕が解放されると思ったのに・・・とブツブツ言ってみる。
桜「残念でした。でも、腕が自由になる様に場所は変えて貰うよ。じゃ、いったん外すね?」
スルリと針を抜き、ここ押さえててねと小さな絆創膏を貼ってくれた。
慧「おぉ、やっと点滴終わったのか?」
ガチャりと遠慮のない音を立てながらドアを開け、慧太にぃが入ってくる。
『もう1回、点滴あるって・・・』
うんざりした顔でそう答えると、慧太にぃはゲラゲラと大笑いをしながら重病人だなぁと言ってドアを閉めた。