第25章 追憶
桜「俺がこんな事を言うのも変だけど、紡くらいの年頃の女の子って、ファッションとかメイクとか、そういった物に夢中になるんだろうけど。そんなの関係なく、バレーに夢中だったからね」
『まぁ・・・それは、そうだけど・・・全く興味がない事もないんだけど・・・』
桜「それから、慧太は笑っちゃうくらい全く気付いてないけど・・・紡の部屋の写真立ての彼。去年の秋ぐらいから・・・かな?紡の話す事には名前・・・出て来ないから、それも関係あるのかな?とかね」
・・・?!
桜太にぃ・・・気付いてたんだ?!
桜「彼も確か、青葉城西・・・だったよね?だから、澤村君達が初めて家に来て練習試合があるって聞いた時、紡はそこに行っても大丈夫かなとか、俺なりにいろんな事を考えた」
今まで、何も言われなかったから。
何も気付かれてないと思ってた。
桜「今日、彼には会えた?」
桜太にぃの言葉に、じわりと視界が滲む。
顔がまっすぐ見れなくて俯くと、重力に耐えきれなくなったしずくが・・・ポタリと落ちた。
桜「ゴメン・・・こんな時にする、話じゃなかったね。この話は、おしまい」
桜太にぃはそう言って、無言で私の頭を抱き寄せ、何度も撫でる。
小さい頃から、ずっと変わらない桜太にぃの心の暖かさ。
お父さんとも、お母さんとも・・・慧太にぃとも違う、私が1番安心出来る温もり。
ゴシゴシと目を擦り、桜太にぃの顔を見上げた。
『・・・カッコよかったよ?凄く・・・』
桜「・・・会えたんだね?」
桜太にぃの言葉に、ひとつ頷く。
『前よりもっともっと、カッコよくて。最後に見た時より、バレーも上手くてカッコよくて。ホントに・・・カッコよかった・・・』
桜「紡、カッコイイばっかり言ってる」
クスリと笑い、桜太にぃが、また、頭を撫でる。
『だって、カッコよかったもん・・・あんなカッコイイ人と、同じ時間を過ごしてたんだって思った。でも・・・』
桜「でも?」
『前よりずっとずっと、遠くに行っちゃった感じがして・・・私も、前に進まなきゃ行けないんだって、思った・・・』
桜「紡は、ちゃんと前に進めてるよ?とってもゆっくりだけど、自分の足で1歩ずつ進んでる 。それに、1人じゃない・・・」
桜太にぃはゼリー飲料をひとつ手に持ち、メッセージを私に向けた。