第25章 追憶
実際、どうだったのかなんて自分が1番分かってる。
平常心なんて・・・平静を装うなんて・・・出来なかった。
それどころか、大泣きして澤村先輩を困らせて。
もしかして・・・澤村先輩も影山とか国見ちゃんみたいに泣き顔がブスだとか・・・思ったかな?
落ち着いた?って聞かれた後に、1度だけキュッと抱き寄せられたのは・・・
ブッサイクな顔を見て、笑い・・・堪えてた、から?
冷静になって思い起こすと、メチャクチャ恥ずかしい!!
あ、いや、論点そこじゃなくて!
胸いっぱいに酸素を取り入れ、それを思いっきり吐き出す。
・・・ダメダメじゃん、私。
やっぱり、終わりに・・・
桜「プッ・・・くくくっ・・・紡?百面相は、楽しいかい?」
声をかけられバッと顔を上げると、ドアに寄り掛かって笑っている桜太にぃと視線が合う。
『ちょっと桜太にぃ!いるならいるって言ってよ!!』
桜「さっきからいましたよー」
『今言っても遅いよ!』
プンッと顔を背け、いじけて見せた。
桜「そんなに拗ねるなよ。ほら、みんなからの預かり物だよ」
私の両手に、ズシリと重みがかかる。
預かり物?
渡されるままに、そこに視線を送った。
飲むタイプの、ゼリーのパック?
『これ、私に?』
今夜は入院決定だから、とりあえずエネルギー溜めとけってこと?
よく分からないけど、お昼を食べたっきりの私には、とてもありがたいと思えた。
『これ、みんなからって言ってたけど・・・私って飲食していいの?』
そもそも、ここにいなければならない理由が理由だから、勝手に飲んだりして怒られるのもと思って、桜太にぃに確認する。
桜「ちょっと待ってね。確認するから」
カルテを取り出し、内容に目を通してくれる。
桜「う~ん・・・特には飲食禁止とか、書いてないなぁ。さっきの診察の時に、先生から何か言われてる?」
『特に何も・・・今夜はここにお泊まりだよ、くらいしか』
桜「そっか。じゃあ、直接聞いてみるかな」
そう言って桜太にぃは、白衣のポケットから院内電話を取り出し番号を押し始めた。
桜「もしもし城戸です。お忙しい所すみません。救搬の患者さんですが・・・はい、妹です。飲食の方は・・・分かりました。はい、ありがとうございました」
電話を終える桜太にぃを振り返る。