第25章 追憶
ー あら、そうなの?てっきり私は、彼氏なのかと思っちゃった。だから、城戸先生が寂しがるわねぇ、って ー
イタズラに肩を竦め、ニコニコと笑いながら私を通り越した方を見ている。
視線の先には、誰がいるんだろう・・・
そう思って、看護師さんの視線を辿ってみる。
ゆっくりと。
そうっと・・・
その先に、見えたのは・・・
えっ?!
『月島君?!』
月「・・・何?そんなに大きな声で叫ばなくても、聞こえるんだけど」
『あ、えと・・・ごめんなさい』
・・・・・・・・・じゃ、なくて!!
『ち、違う!違います!月島君はそんなんじゃないですっ!』
首をブンブンと振りながら、看護師さんの言葉を否定する。
月「イキナリ全否定とか、失礼デショ」
『だって違うじゃん!!』
月「どっちでもいいけどさ。いつまで僕の手を握ってるつもり?」
月島君に言われて自分の手を見て、そこで初めて言われた意味を理解する。
わっ!!
な、なんで?!
驚き過ぎて手を振りほどく事もできず、ジッと月島君の顔を見続けた。
月「言っとくけど。ポチが握って来たんだから」
そっぽを向いて眼鏡を押し上げながら月島君が私に言った。
私が?
『う、うそ・・・でしょ?』
顔だけを動かし、澤村先輩や山口君を見る。
だけど、2人とも少し視線を泳がせながら、横に首を振った。
誰かに嘘だと言って欲しくて、影山を振り返る。
あ・・・なんか、凄い怖い顔してるから聞けない雰囲気・・・
でも、私から握って来たとか?
やっぱり違うんじゃ・・・?
・・・あ。
なんか、思い当たる所が、ある、ような?
さっき、うっすらと目が覚めてきた時。
真っ暗で、怖くて。
でも、誰かがそばにいる気配がして。
手を伸ばしたら、誰かの手があって。
・・・じゃあ、あの時の手は月島君だったの?!
暖かくて、安心するって思ったから・・・てっきり桜太にぃなのかと思ったけど、それも違って。
あのままずっと、握ってた?!
考えれば考えるほど恥ずかしくなってきて、パクパクと口が動くばかりで、繋がれている手から目が離せなくなる。
影「城戸」
『ひゃい!!』
急に声を掛けられて、未だかつてないほど肩が跳ねる。
『な、なんでございましょうか・・・王様・・・』
影「あぁ?!」
影山の眉間に深い溝が出来る。