第25章 追憶
えっ?!
武田先生?!
桜「申し訳ないんですが、紡を面倒見て下さった相手校の方々に大丈夫だという連絡を入れて貰ってもいいですか?」
武「はい、勿論です」
桜「それから、後日にはなりますが必ずご挨拶に伺いますとも伝えて下さい。よろしくお願いします」
武「分かりました、必ずお伝えします」
軽くお辞儀をして、桜太にぃは部屋から出て行ってしまう。
その後に続き、武田先生も電話をかけてきますと言って部屋から出てしまった。
ー じゃ、城戸先生が戻る前に終わらせちゃいましょうか ー
看護師さんがカルテに記入しながら、血圧計を準備し始める。
作業の合間で、なぜかチラチラと私の顔を何度も見ては、私と目が合うとニコリと微笑む・・・を繰り返していた。
私、顔になんかついてる?
なんであんなに微笑ましく笑みを浮かべながら顔を見られているんだろう・・・
ー 血圧は通常範囲、脈拍は少し早めかな?と思うけど、それはきっと、彼氏のせいかしらね? ー
フフフッと笑いながら、計測したものをカルテに書き込んでいく。
彼氏?
思い当たる人物がいないことは自分でも分かってる。
でも、何気なく自分が寝かされているベッドの周りに目を向けてみた。
足元の壁側には、山口君と澤村先輩がいて、2人とも視線を泳がせ困った様な顔をしてこちらを見ていた。
そのまま目線を動かしていくと・・・
うっ・・・わぁ・・・
なんかいつもの不機嫌な月島君がいて。
その隣には・・・更に不機嫌な顔を見せている、影山が立っている。
ここへ来た時は、影山しかいなかったよね?
後から武田先生が来るのは聞かされていたけど。
澤村先輩は部長だから?とか、山口君はきっと責任を感じて?とかは、分かるけど・・・
なんで、月島君が?
頭の中にハテナが飛び交い、さっきの看護師さんの言葉がグルグルと回る。
脈拍が早いのは、彼氏のせいかしら?
・・・・・・・・・?!
彼氏?!って、なに?!
『あの、看護師さん?私、今は、その、か、彼・・・氏とか、そういうの・・・いませんけど・・・』
〖 彼氏 〗、というワードをこの場で言うのが恥ずかしくて、モゴモゴとしてしまう。
桜太にぃと同じ職場で働く人に・・・そんな話とか、恥ずかしいよ!
家でもそんな話、ほとんどしないのに!