第25章 追憶
規則正しい機械音が、近くから聞こえる。
それと・・・人の、気配。
桜太にぃ、なのかな・・・
脳波の検査をする時に、検査室の中に一緒にいたから。
検査、終わったんだろうか・・・
うっすらと目を開けてみても、周りが暗くて何も見えない。
いくつかの検査を終えて、今のところは異常は見当たらないって聞いて。
それだったら、みんなの所に帰りたいって言って、桜太にぃを困らせちゃったけど・・・
その後、桜太にぃが早く終わる魔法をかけてあげる・・・って言ってて。
・・・そこまでは何となく覚えてるんだけど。
桜太にぃと学校の事とか、今日の練習試合の事とかを話してるうちに眠くなって来て、いつの間にか・・・寝ちゃったみたい。
目が覚めていることを、知らせたいのに。
体がピリピリ痺れていて動けない。
だから、耳だけに神経が集中する。
真っ暗なの、怖いのに・・・
どうして桜太にぃ、部屋の明かりつけてくれないんだろう。
暗闇が・・・怖い・・・
『ん・・・』
痺れた腕を何とか持ち上げて、そばに居る誰かを手探りで探す。
『誰か、いるの?・・・桜太にぃ?』
何も見えないまま、何度か伸ばした腕で空を切る。
・・・!!
誰かが・・・私の手を握り返した?!
誰?
でも・・・暖かくて、なんか安心する・・・
ー あら、目が覚めたのね?城戸先生を呼んで来ますね ー
この声、さっきの看護師さんの声だ。
城戸先生を、呼んで来る?
じゃあ、この手は・・・誰?
ドアが開く音がして、誰かが入って来た。
桜「紡、目が覚めたんだね?」
『桜太にぃ?部屋が真っ暗で怖い・・・』
桜「大丈夫だよ、紡。いまちゃんとするから。主任、ひとつ明かり落として貰える?」
ほんの少しの後、桜太にぃがマスク外すねと言って私の顔に触れた。
さっきの真っ暗な感じから、急に明るい光が飛び込んで来て、ゆっくりと瞬きを繰り返す。
桜「気分はどう?気持ちが悪いとか、頭が痛いとか、めまいがするとかはない?」
『大丈夫。真っ暗だったのが、怖かっただけ』
桜「そっか。でも今は明るいから、もう、大丈夫だろ?」
ひとつ頷いて返すと、桜太にぃはそっと頭を撫でてくれた。
桜「主任、バイタルチェックお願いします。目が覚めた事を先生に伝えて来ます。それから・・・武田先生」