第25章 追憶
あと、ふわふわと柔らかくて。
それに、甘い香りも・・・
・・・今日だって。
あ、あれは月島用のドリンクの香りもか?
月「顔、緩んでますケド」
「えっ?!」
チラリと冷たい視線をよこしながら、月島が俺に指摘してくる。
しまった。
つい、余計な事を思い出した。
1回落ち着こうか、俺。
ここは病院で、紡はいま検査中で、今は山口の・・・・・
山「オレ・・・絶交は、イヤ・・・です」
山口が思い口をゆっくりと開けた。
桜「じゃ、この話は終わりって事でいいかな?紡が言ってたよ?山口君は、本当は頑張れるのに、周りに惑わされてるだけだって」
それは、俺も思ってた。
日向や影山、それに月島がいろんな意味で目立ってるだけで。
山口だって、何も出来ないヤツじゃない。
・・・まぁ。
少し指導は必要かも知れないが。
「山口。明日から特別メニュー、やるぞ」
山「特別メニュー・・・は、はい!」
「その代わり、ちゃんと身につけろよ?」
山「はい!!」
山口の顔つきが、少し変わった。
それはまだ、ほんの少しの事だけど。
いつもオドオドして月島の後ろにいる山口からしたら、大きな1歩なんだろう。
慧「おい、兄ちゃん。特別な呪文を教えてやろう」
特別な呪文?
慧「影山、紡がいつも心に決めてる言葉、知ってっか?」
影「城戸の?・・・あぁ、アレっすか?」
慧「そう、アレだ。そこの兄ちゃんに教えてやれ」
慧太さんに言われて、影山が山口の前に立った。
影「山口・・・やるなら、出来るまで。これが、いつも城戸が個人練習する時に何度も口に出してた言葉だ」
山「やるなら・・・出来るまで・・・」
やるなら出来るまで・・・か。
なるほどな・・・紡のあの頑張りは、その言葉が柱になってるのか。
多少の事はサラッとこなしている様に見えて、実は根っからの努力家っていう事だったんだな。
だからこその、着眼点・・・なのか。
紡との約束は今日までだったけど・・・
誰に対しても物怖じせずにハッキリと指摘できる紡は・・・やはり今の烏野には必要だと思う。
・・・残っては、くれないだろうか?
もちろん、これからどうするかは紡の気持ちを尊重したい。
だけど・・・出来るなら、このままみんなと一緒にいて欲しい。
どこでどう転ぶか、どう躓くか分からないけど・・・