第8章 つかの間の休息
『及川先輩が、どうかした?』
桜「あくまでも俺の思ったことだけど、彼はあんな風に紡ちゃ~んとか言って女の子大好きで~すみたいに、チャラチャラした感じを全面に出してるけど、何か内に秘めてる物があるよね?」
私は考えた。
確かにいつも、軽い感じでいるけど・・・秘めてるもの?と言われると、それに対しての答えが分からない。
桜「観察眼が鋭くて、それでいて、スルッと懐に入ってくる懐っこい感じとか。その爽やかさの裏側に何かを隠してるような?」
『ん~、そう?私はよく分からないけど』
桜太にぃは職業柄、それはそれで人を観察するのが仕事だから、そんな兄が言うのだからそうなんだろうと思うけど、今の私にはサッパリ分からなかった。
桜「ふふ、紡には難しかったかな?」
頭をポンッとしながら桜太にぃは笑っていた。
内に秘めてるモノ・・・ねぇ。
『う~ん・・・全然わかんないや』
そう答えると桜太にぃは、フッと笑って、
桜「敵に回ったら、厄介な相手・・・かな?」
そんな事を言いながら、車に乗り込んだ。
・・・敵に回すと厄介な相手・・・?
この時。
私はまだ、いつか来るその時を想像もしていなかった。