第8章 つかの間の休息
ふと視線を感じ振り向くと松川さんと視線が合う。
『別々の日に、それぞれの兄と会っていて、実は双子ですなんて言われたら誰だって驚きますよね?』
松「ま、そうだよな。及川のは驚きすぎだけどな?」
お互いにそう言って2人で笑っていると、桜太にぃと談笑していた及川先輩が
「もぅ!まっつん!!勝手に紡ちゃんと仲良くしちゃダメ~!!」
そんな事を言いながら、またも間に割り込んで来た。
松「別にいいじゃねぇか、お前の後輩なんだろ?」
「ダメダメ!まっつんと紡ちゃんは今日初めて会うのに仲良くなるの早すぎるっ。紡ちゃん、初対面の男の人と急に仲良しになっちゃダメなんだからね?」
いつもの様に、私の頭をポンポンしながら及川先輩が言う。
『及川先輩は・・・私のお父さんですか?』
「えぇ~?紡ちゃんまでっ!」
そんなやり取りを交しながら、私達は3人で笑いあった。
桜「紡。そろそろ行こうか?先輩達は午後も練習あるんだからね?」
様子を見ていた桜太にぃが、私を促す。
私は2人に午後も頑張って下さいねと告げると、その場を後にした。
桜「紡は、誰からにも愛されていて・・・俺としては嬉しいやら淋しいやら」
ニコニコしながら桜太にぃが私に言う。
『そんな事ないよ?私、ちょっと空気読めないとこあるし、それ言わなくても良くないってこと、言っちゃうことあるし。胸の内に閉まっとこうって思っていても言葉にだしちゃって、チームメイトとも何回か衝突あったしね・・・』
桜「それも含めて・・・じゃない?衝突はしても結果的には仲直りとか出来てたんでしょ?」
『まぁ、そうだけど・・・いつまでも衝突のままでチームがバラバラだと、それより先が見いだせないし』
桜「ハッキリとした物言いって言うのはさ、ある意味、諸刃の剣だけど、言いたくても言えない、もしくは言わないって人が多い中で決して不必要な人間ではないと思うよ。そんな感じだと、俺より慧太の方が紡に近いかもね、アイツすぐムキになって怒り出すし」
『えぇ~?私はすぐ怒ったりしないもん!』
桜「例えば、そういうところ」
桜太にぃが笑う。
私は、むぅ!と唇を尖らせながら、そんな事ないもんと呟き隣を歩く。
桜「後さ、さっきの・・・及川君、だっけ?」
突然会話の中に及川先輩の名前が上がり、私は桜太にぃを見上げる。