第8章 つかの間の休息
~及川side~
10分休憩!
コーチにそう言われ、オレ達は大きく息を吐きながらホッとする。
朝からずっと練習してきて、やっとのひと休み。
真冬だというのに汗だくになった体を拭こうとカバンを開けた所に、紡ちゃんからのLINEが来た。
メッセージを開くと、この前のマフラーなどを返したいから青城までくるって書いてあった。
こっちまで来るの大変だから、オレが取りに行くよ?と返事をすると、それじゃ失礼だからと返信が来て、訪問しても大丈夫な時間を聞かれ、お昼休憩ならと言って連絡を終えた。
無意識に顔が緩んでいたのか、近くにいた岩ちゃんに怪訝そうに見られた。
・・・岩ちゃんとは、あの日以来まともに会話してない。
もちろんお互い、練習に関しての会話はするけど、それ以外の事は何も・・・
これからの事もあるし、ホントはもう1度ちゃんと向き合って腹を割らなきゃいけないとは思う。
でも、部活が終わればサッサと先に帰ってしまうし、オレは何となく、その機会を逃したままでいた。
「岩ちゃん、あのさ・・・今日」
岩「・・・練習始めるってよ」
意を決して声をかけるも、不発に終わってしまう。
オレは自分にモヤモヤしながら、コートの中へ戻って行った。
午前の部の練習をひと通りこなすと、少し早めだけど昼休憩にしようとコーチに言われ、紡ちゃんと約束のあったオレは心弾ませた。
タオルで汗を拭き、シャツを着替えて、紡ちゃんもうそろそろかな?なんて思って電話をかけてみた。
「やっほ~、今からお昼休憩なんだけど~、紡ちゃんは今どの辺かな~?」
ウキウキしながら話すと紡ちゃんは笑いを浮かべながら対応してくれる。
もうすぐ着くという話から、手荷物が多いから誰か連れてきて欲しいと言われ、電話を片手に周りを見回す。
いちばん最初に着替えをしている岩ちゃんが見に入ったけど、
「岩ちゃんは連れて行かないから大丈夫だよ」
なんて紡ちゃんに言って、じゃあと電話を切り誰に頼もうか再度見回す。
すると、しゃがんで荷物をゴソゴソするまっつんの後ろ姿が目に入り、オレはその背中にペタンと覆い被さった。
「まっつん、付き合って♡」
松「・・・断る。俺にはそっちの趣味はねぇよ。ってか、重たいからどいてくれ」
「違う違う~!そっちの付き合ってじゃないってば。」