第25章 追憶
病院に着くと、救急処置室の前でポツリと座る王様の姿があった。
武「影山君、お待たせしました」
先生が声をかけると、王様は弾かれたように顔を上げコッチを見た。
影「先生、と澤村さん・・・山口・・・それに月島まで・・・?」
予想外の人数に驚いたのか、王様が目を丸くする。
澤「まぁ、ちょっと・・・それより、今どんな状況だ?」
澤村さんに聞かれ、王様が病院に着いてからの事を細かく説明する。
へぇ・・・あのお兄さん、ここのドクターなのか。
そんな事を考えながら、何となく周りを見回してしまう。
武「それでは今、検査に回されているんですね?」
影「はい。城戸が、未知なる検査に行ってくるって、そう言ってました」
山「未知なる・・・」
影山の言葉に、山口が不安な声を漏らす。
武「頭を打っていると言うことで、恐らく検査が必要だと言うことなのでしょう。どんな検査をしているのかは、さすがに分かりませんが・・・」
先生が話していると、入口の方からバタバタと慌ただしい足音が近付いてくる。
ー いた!悪ぃ影山、遅くなった! ー
誰?
見るからに病院には似合わなそうな感じの人物が、影山の姿を見つけるとコッチに向かって来る。
影「慧太さん・・・」
慧「紡の荷物用意するのに手間取った。待たせてワリィ・・・と、澤村君も来てたのか?」
影山と澤村さんの事を知っている?
澤「俺達も今来たところです」
慧「そっか。で・・・えっと?」
他の人達は誰だ?と言う顔で1度チラリと僕達を見て、その人はまた澤村さんの方を向いた。
澤「顧問の武田先生と、部員の月島と山口です。先生、こちらは紡のもう1人のお兄さんの慧太さんです」
もう1人の?
なるほど、どうりで何となく見た事あるような感じがしたのか。
武「バレー部顧問の武田です。澤村君は部長なので一緒に・・・それから月島君と山口君は何かあって人手が必要な時の為に、一緒に来てくれました」
慧「すみません、助かります。紡の兄の、城戸 慧太です」
武「あの、この度は僕が引率していながら、大変申し訳ございませんでした」
先生が深々と頭を下げ、澤村さんや王様が頭を下げるから、自然と僕と山口も頭を下げた。
慧「先生、それからみんなも。頭を上げて下さい」
兄弟だから似てて当然だけど・・・
もしかしてあの兄とこの人って?