第25章 追憶
~月島side~
山口のあんな姿を見たのは初めてだ。
元々いじめられっ子で、誰にでもニコニコして、僕の後を着いてくる。
そんな山口だったから。
なのに、さっきの山口は・・・
動揺して取り乱すのは、まぁ、仕方ない。
目の前で、ポチが山口を庇ってあんな事になったんだから。
ー 嫌だ!城戸さんを離したくない! ー
そう言ってポチを抱き抱えたまま離さない山口に、ちょっとイラついて。
無理矢理、引き剥がした。
山口が離さないせいで、応急処置が出来ないのも困ると思ったし、なにより・・・
意識がないとはいえ、山口に抱きしめられていたポチにもモヤモヤしたから。
何なの?
この、ムダにイラつく感じ。
澤「・・・って事で、今日はこのまま解散!」
「「ッス!」」
・・・、ほとんど話聞いてなかった。
後で山口にでも探りを入れるか。
「山口、かえ、」
山「ツッキー・・・今日は、先に帰って」
僕の言葉に被せて、山口が先に帰れと行ってきた。
「・・・は?」
山「オレ、先生に頼んで城戸さんのところに、一緒に行くから。じゃ・・・」
はぁ?
何なのソレ?
小走りで澤村さんと先生の所に行く山口の姿を目で追いながら、鞄を肩にかけた。
小さくため息を吐き、僕も同じ方向に足を向ける。
山口が、2人に懇願するのが聞こえてくる。
澤「月島?帰らないのか?」
「まぁ。山口が病院行くなら、僕も行こうかと」
山「ツッキー?」
なんでみんな、そんなに不思議そうな顔で僕を見る?
「変なモノ見る様な目で見ないでクダサイ。病院でまた山口が暴走したら・・・困るデショ」
澤「あ、いや、俺もいるし・・・」
「澤村さんは王様担当デショ。だからコッチは僕が」
軽く笑って、山口の襟を掴んで見せる。
澤「しかし、だな・・・」
武「澤村君、この際ですから4人で行きましょう。何かあった時に、人手が必要になるかも知れません」
澤「先生が、そう言うなら・・・」
「ジャ、決まりって事で」
武「病院へは僕の車で行きましょう。駐車場から車を持ってきますので、みなさんは門の前にいて下さい」
澤「先生、宜しくお願いします」
先生の車に乗せて貰い、ポチが運ばれた病院へ向かう。
その間は誰もが無言で、息苦しさを感じる。
フッと息を付き、流れる景色を見ていた。