第25章 追憶
すみません、と、看護主任に断りを入れて鳴り続ける着信に出た。
「はい。城戸です」
“ もっ、もしもし!あのっ、烏野高校男子バレー部顧問のたた、武田ですっ ”
バレー部の?
「武田先生、先日は大変お邪魔しました。そんなに慌てて、どうされたんですか?」
“ はい、あのっ!実は、城戸さんが倒れましてっ! ”
紡が・・・倒れた?!
「武田先生、落ち着いて下さい。それで、倒れたというのは?」
“ 弾けて飛んで来たボールからうちの部員を庇って、ボールと一緒に壁に・・・頭を打った様で少しのあいだ意識が途切れてました。今は意識も戻り落ち着いてますが、その、足も捻挫をしていて・・・ ”
頭を打って意識が?!
鼓動が・・・急加速して行く・・・
「分かりました。現状を教えて下さい」
“ はい。今は救急隊員の方の応急処置を受けていて、それが終わり次第、病院に向かうとの事です ”
「搬送先の病院はどこですか?」
“ 事情を説明して、お兄さんの勤務先の病院にして貰える様にお願いしました ”
「そうですか・・・分かりました。自分はいま病院にいるので、受け入れの準備をお願いしておきます」
“ 宜しくお願いします。それであの・・・同行者なんですが、僕は部員を学校に送り届けなくてはならなくて・・・影山君が城戸さんと一緒に救急車に乗ることになりました。もちろん僕も部員を届け次第そちらに向かわせて頂きます ”
「影山君ですね?分かりました。それでは後ほどまた・・・」
“ あの、顧問として僕がついていながら・・・大変申し訳ありませんでした・・・ ”
「武田先生のせいではありませんよ?とにかく、こちらも準備をしておきますので・・・先生もどうかお気を付けて」
そう言い交わし、電話を切った。
ー 城戸先生、どうかされたんですか? ー
電話でのやり取りが聞こえていたんだろう看護主任が、作業の手を止めて顔を上げた。
「これから救急搬送が、1台入ります」
ー 第一報の状況は? ー
「頭部外傷、足関節捻挫。女性・・・うちの・・・妹です・・・」
ー 城戸先生の妹さん・・・?分かりました、受け入れの準備を手伝いに行きましょう ー
「すみません、お願いします」
看護主任の指示で、他のナース達がバタバタと動き出す。
俺は白衣の襟を正しながら、足早に歩き出した。