第25章 追憶
~桜太side~
ー 城戸先生、お先に失礼します ー
「あ、はい。お疲れ様でした」
日勤の看護師達が、順番に準夜の人と代わるために帰って行く。
俺もそろそろ終わりにしないとな。
時計を見ながら、担当している子供のカルテチェックを進める。
紡は、どうだったかな?
澤村君達との約束の期限は、今日迄だからって言ってたから。
電子カルテを閉じ、机の上を整理しながら、今日の夕飯は何にしようか?なんて考えて、帰り支度を始めていた。
紡の事だから、きっとボール出しだとか、そういう仕事は率先して動く。
澤村君も、そういうちょっとした事を紡に頼んでくれている。
だから、今日は紡の好きな物にしようかな。
「オムライス・・・に、フルーツヨーグルト・・・」
ー えっ? オムライス・・・ですか? ー
「えっ?!オムライス?!」
後ろで作業をしていた看護師から言われ、驚きながら振り返った。
ー 城戸先生が今、オムライスって。あと、フルーツヨーグルト、とか? そのメニューがお好きなんですか? ー
クスクスと笑いながら、そう言って来る。
しまった・・・心の声が漏れてたのか。
「いえ、妹がそのメニュー好きなんです」
ー そう言えば城戸先生には、歳の離れた妹さんがいらしたんですよね? ー
「えぇ、ちょうど10歳離れてます」
ー あら、じゃあ妹さんは花の女子高生ですね? ー
花の女子高生・・・看護主任の言い方が今風ではなくて、その言葉が紡に合うんだろうかと笑ってしまう。
どう考えてもお転婆で、女の子で集まって恋バナをするとかより、どっちかと言うと男の子の友達の方が多かった。
泥だらけになって遊んだり、俺や慧太とカブトムシを捕まえに行ったり・・・
花の女子高生・・・う~ん・・・
ー 妹さん、高校生って事は彼氏とか出来たら城戸先生は心配になるんじゃないですか?急にキレイになったりしたら、危ないですよ~? ー
「勘弁して下さいよ、主任?」
ニヤリと笑いながら言う看護主任に、俺も笑いながらそう返す。
さて、支度も終わったし?
帰りながら買い物して・・・あ、今日は確か嶋田マートがチラシ入る日だったかな?
スマホを取り出し、ネットチラシをチェックしようとした瞬間、着信が入った。
知らない番号からだな・・・