第8章 つかの間の休息
更に、手荷物が多いので人手が必要だと言うことも伝える。
すると急にヒソヒソ声で、
【 あのね、岩ちゃんは連れて行かないから大丈夫だよ】
などと言い、じゃ後でねと電話を切る。
別にそんな事は気にしなくても・・・と思ったけど、それは及川先輩なりの気遣いなんだろうと思いなおす。
5分程歩くと青葉城西の門まで着いた。
よいしょっと、手荷物を持ち直した所で長身の影が2つ、こちらに歩いてくるのが見えた。
それが及川先輩と、もう1人の誰かだと分かるまで時間はかからなかった。
「ゴメンねまたせちゃって」
いつもと変わらない感じで及川先輩が手を振りながら歩み寄る。
『及川先輩こんにちは。えっと・・・』
もう1人の名前が分からず、チラリと及川先輩を見る。
「あ、まっつんだよ」
軽く紹介された人は
「お前ね、初対面なんだからちゃんと紹介しろよ」
そう言って及川先輩を小突き、私の正面に立直した。
松「松川です」
『松川さん、こんにちは。休憩中にお邪魔してすみません』
松「これは、ご丁寧にどうも」
手を差し出され、反射的に私も手を伸ばし握手をかわす。
「ちょっとまっつん!勝手に触らないでよ」
及川先輩は私たちの手を掴むと、もう~、なんて言って引き離した。
「お兄さんも、お忙しい中すみません。」
桜「いえいえ、そんな事は」
そう言って2人も挨拶をした所で私は手にしている荷物を簡単に説明して手渡した。
荷物の大半が差し入れと分かると、及川先輩も松川さんも恐縮して丁寧にお礼を述べた。
桜「1日練習したら、いくらお昼食べてもお腹空いちゃうでしょ?いつも紡がお世話になってるので、ほんの気持ちですが・・・」
桜太にぃが重ねて言うと、2人は更にお礼を告げる。
そして及川先輩は桜太にぃをまじまじと見ると、ハテ?というような顔をして桜太にぃに問いかけた。
「ところでお兄さん、もしかしてイメチェンとかしました?なんかこう、この間お会いした時と雰囲気が違うというかなんというか」
私は思わず吹き出した。
そっか、この前あったのは慧太にぃだったもんね。
桜「あぁそれは多分、弟の慧太です。俺達は双子なんで」
双子ー?!と及川先輩は大げさなくらいに驚いていた。
「大変失礼しました。改めまして、及川です」
真剣に挨拶し直す及川先輩の姿に笑ってしまう。