第25章 追憶
サイレンの音を真近に聞きながら、さっきの事を考えていた。
及「紡ちゃん?オレを心配させた悪い子には、お仕置きが必要だよ?」
そう言って、及川先輩は・・・
自分の頬に、そっと触れてみる。
いままでの及川先輩は、確かにスキンシップは多かったけど。
いやいやいやいや、普段からスキンシップ多すぎるんだけど・・・
その度に岩泉先輩に怒られてて。
だけど・・・さっきのは何か、いつもと感じが違ったような気がする。
影「城戸、どうかしたか?」
隣に座ってる影山が、声をかけて来る。
『うん・・・あの、さ・・・?』
影「あ?なんだよ」
さっきの及川先輩、いつもと違ったんだけど・・・
・・・なんて、聞けるわけ・・・ないよね。
影「城戸?」
『練習試合、勝てたね・・・』
違う事を、影山と話す事にした。
影「及川さん抜きのメンバーとで、ギリギリだったケドな」
『でも、勝てた。烏野にとって大きな1歩、なんじゃない?』
影「・・・だな」
『だけど・・・』
影山から視線を外し、車内の天井を見つめた。
『そんな大切な日に、こんな事になっちゃって・・・私・・・どうしよう・・・』
張り詰めていたものが溶け、視界が滲む。
『お手伝い最終日に、大変なことしちゃって・・・みんな呆れてるよね・・・』
気弱になってるのを影山に見られたくなくて、影山がいない方に顔を向けた。
影「お前はさ、よくやった・・・と、俺は思う」
『何で?だってこんな事に、』
影「聞けよ。お前は山口を庇った時、最初に何を考えた?」
最初に何を・・・って?
それは山口君がケガなくて良かった、とかだけど・・・
影「もし、俺が城戸と同じ立場だったら。山口を盾にしてでも、避ける」
『影山って、結構ヒドイ・・・知ってたけど』
影山の言葉に小さく笑いながら、そう返す。
影「あぁ?!何でだよ!」
『だって、山口君を盾にしてでもとか、有り得ない・・・でも、私もあの時は咄嗟に体が動いちゃっただけだから、分かんないけどね』
影「いいんじゃね?結果オーライだろ。お前は知らないだろうけど、山口やばかったぞ?誰がどう説得しても、城戸さんを離したくない!とか大泣きして」
そんな事が・・・
『あれ?でも私が見た時は、山口君は離れた所にいたけど・・・』
確か、月島君の足元に・・・