第25章 追憶
「じゃ、言い方を変える。さっきのは単に車を早く出したかっただけ?それとも・・・妬けた?」
岩ちゃんが、グッと息を飲むのが分かる。
岩「・・・知るか。先、行くぞ」
誤魔化したってダメだよ岩ちゃん?
オレと岩ちゃんが、どれだけ長い付き合いなのか忘れたの?
それにさ、オレは気付いてたよ?
岩ちゃんが・・・紡!!って、叫んだ事。
岩ちゃん、ホントはまだ・・・
〖 紡ちゃんの事・・・想ってるんじゃないの? 〗
言葉に出しかけて、やめた。
だって岩ちゃんは、紡ちゃんの手を離したんだから。
オレはまだ、スタートラインに立てたに過ぎない。
だけどね、岩ちゃん。
これから少しずつ、進むから。
何かを手に入れるには、犠牲にするものがあるかも知れない。
例えそれが・・・岩ちゃんだったとしても。
オレは諦めたくない。
やっと今、同じライン上に立てたんだ。
オレのチェックメイトまでの道のりは長いけど。
ひとコマずつ、進むから。
フッと息をついて、いつもの調子に切り替える。
だいぶ先を歩く岩ちゃんの背中を追いかけて、飛びつく。
岩「のぁっ?!・・・何しやがるグズ川!離れろ重いだろうが!!」
振り払われても、岩ちゃんに絡み付く。
「岩ちゃん、オレはどんな事になってもさ・・・岩ちゃんの事、愛してるから」
キマった・・・
岩「・・・・・・・・・グズ川」
「なぁに?」
岩「テメェ気持ち悪いんだよ!離れろボケ川!」
「あっ!岩ちゃん悪口増やした?!」
岩「あぁ!!うるせぇクソ川!いっぺん息の根止めてやろうか・・・?」
「あっ!また増えた!!・・・って、い、岩ちゃん?息の根止めるのは・・・遠慮したい・・・な?」
ズルズルとオレを引き摺りながら歩く岩ちゃんの背中にもたれ掛かったままでいる。
「ねぇ岩ちゃん?さっきいい事思いついたんだけどさ?この後の練習・・・イツメンに矢巾入れない?代わりにオレは外出てるから」
岩「矢巾?」
ね?いい考えでしょ?
・・・って、続けようとしたのに。
岩「今まで散々サボっといて、まだサボる気か!」
「痛いよ岩ちゃん!!ゲンコツやめて!!」
結局・・・オレはこの後の練習で、ヘロヘロチームの仲間入りとなった・・・
こんなはずじゃ・・・なかったんだけどなぁ。
グスン・・・