第25章 追憶
国見は紡ちゃんとクラスも同じ事が多かったし、帰り道も、一緒に帰るのを何度か見かけた事がある。
練習中だって、休憩時間に話してるのも知ってる。
無気力星人の国見が、紡ちゃんといる時は生き生きとしてたからね。
だいたい国見は、何で紡ちゃんを呼び捨てなんだよっ!
まず、そこ!
そこね!!
紡ちゃんも違和感なく返事とかしちゃってるしね!!
それから金田一。
まぁ・・・金田一の場合はあからさまにバレバレなんだけどさ。
気付いてないのは紡ちゃん本人だけ、みたいな?
紡ちゃんが気が付かないのも、仕方ないか。
ずっと、岩ちゃんしか見えてなかったからね。
・・・あれ、何か自分で言っててムッと来た。
そうだ、矢巾も。
アイツ、いつの間に紡ちゃんをナンパしてんだよ!
溝口君がオレに見境ねぇなって言ったけどさ!
矢巾こそだろ!
まったく、油断も隙もない。
紡ちゃんにナンパする暇もないくらい、ヘロヘロになるまで練習付き合わせてやる!
ん、ちょっと待って?
ヘロヘロになるまでオレの練習に付き合わせるって事は?
・・・オレもヘロヘロって事じゃん?!
矢巾は・・・岩ちゃん、まっつん、マッキーのグループに放り込もう。
ついでに国見と金田一も。
うん、ピッタリ6人。
我ながら、いい考え。
後で練習メニュー考えないと。
ま、その前に・・・
チラリと紡ちゃんの方を見る。
まだ救急隊員に足の応急処置をされながら、何かを話してる。
意識が飛んじゃってる時は、本当に心臓止まりそうだった。
だから。
紡ちゃんの存在を。
暖かさを、確認したい。
慌てず、ゆっくりと、1歩ずつ。
静かに歩み寄り、紡ちゃんの真後ろにそっと立ち止まった。
『はぁぁぁ・・・』
ぼんやりとしながら処置を受けてる紡ちゃんが大きく息を吐いた。
「おっきなため息だねぇ、紡ちゃん?」
紡ちゃんの耳元に顔を寄せ囁くと、誰が見ても分かるくらいに肩が跳ねる。
『・・・・・・』
でも、紡ちゃんからの返答は来ない。
「あらまぁ、無視ですか?及川さん泣いちゃうよ?」
続け様にもう1度囁くと、ピクリとしながら顔だけをオレに向けた。
眉を潜めながらオレを見る紡ちゃんは、そんな顔していても可愛いさが溢れていて、怖い顔してるなんて到底思えない。