第25章 追憶
~及川side~
さっき・・・
紡ちゃんの意識が戻って、顧問の先生がいくつかの質問をしていた時。
少し気になるワードがあった。
人は、何らかの理由で意識が飛んでいる時、全ての人がそうじゃないけど・・・自分の潜在意識に強く残っている事柄を夢に見たり、体験してしまう事があると聞いた事がある。
紡ちゃんの場合は、自分以外の自分がいたようだから、少なくても体験した、という感じじゃない。
だとすれば。
過去の体験を、客観的に見て来たという事になるのか?
じゃあ、公園にいた、という紡ちゃんのあの話は・・・
武「そこには、城戸さんの他にも誰かいましたか?」
『えっと・・・確か・・・私の他にも、中学生の私がいて・・・あと、ハジメ先輩がいて・・・』
オレと会った冬の日から【 岩泉先輩 】と呼んでいた紡ちゃんが、【 ハジメ先輩 】と言った事。
流れで思わずオレも、岩ちゃんが?なんて言って、側にいた岩ちゃんを見たんだけど・・・
その時の岩ちゃんは、何か苦しそうで。
それで、思い出せないなら、思い出さなくてもいい・・・そう言って紡ちゃんの頭を撫でた。
何か、引っかかる。
何が?と聞かれても、まだオレには分からないけど。
ひとつだけ分かるのは、その時の岩ちゃんは何かを思い詰めたような、苦しい表情・・・と言うより、切ない・・・といった顔をしていた。
それも、引っかかる。
紡ちゃん自身が、中学生の私がいて・・・と言っている辺り公園って言うのは、きっとトスの練習をよく教えた公園の事だろう。
学校帰りや紡ちゃんの夏期講習の帰りに寄り道した、あの公園。
ー よく思い出せないけど、悲しくて ー
確かに、紡ちゃんはそう言っていた。
中学生の紡ちゃんがいて、岩ちゃんがいて、悲しかった・・・出来事?
答えが・・・・・・・・・見えた気がする。
あの2人がいて、楽しかった・・・なら、いくらでもスグに想像がつく。
なんせ腹立つ位ラブラブオーラ全開だったからね。
オレの気も知らないで。
だけど、悲しかったって事は。
2人が終わりを迎えたのは多分、その公園だ。
それよりも、矢巾。
あと、国見と金田一。
中学の時から国見と金田一が紡ちゃんに想いを寄せてるってのは、オレも何となくだけど気が付いてた。
もしかしたら?位にしかだけど。