第8章 つかの間の休息
クリスマスの出来事から数日、私は及川先輩に借りた物を、どうやって返しに行こうか考えていた。
自宅を知っているので届けてもいいし、練習終わりにどこかで落ち合って渡してもいい。
でも。
どちらにしても、今の現状で及川先輩と2人で会うと言うことに、私は少なからず抵抗があった。
どうしたものかと考えていると、桜太にぃが部屋をノックした。
「紡?ちょっといい?」
大丈夫だよと返事をすると、桜太にぃが部屋に入ってきた。
「勉強ばっかしてるとハゲちゃうから、気分転換に買い物でも行かない?」
『そんな事でハゲてるなら、桜太にぃはもぅヤバいね』
などと笑いながら、そうだ、桜太にぃに相談してみようと思い、事情を簡潔に説明する。
「じゃあさ、買い物行く前に届けちゃう?車は出せるから、その先輩に連絡してごらん?」
などと言われ、私は及川先輩にLINEを送ってみる。
するとすぐに返事が来て、こっちまで来るのは大変だから取りに行くよ?と書いてあったから、兄と用事で出かけるので届けるぶんには大丈夫ですと送ると、お昼休憩なら・・・って事に落ち着いた。
そのやり取りを桜太にぃに伝えると、じゃあ仕度したら出かけようかと言う話にまとまり、私達はそれぞれ身支度をして外へ出た。
途中、桜太にぃが
「先輩っていうのは、バレー部の先輩?」
そう聞いてきたから、別に隠す必要もないしセッターの仕事を教えてくれていた先輩だよと言うと、
「じゃあ、お昼食べても1日練習したらお腹すいちゃうよね?ちょっと寄り道して行こうか」
などと言って、駅前のドーナツ屋さんで差し入れを買い込み車に積んだ。
もちろん代金は桜太にぃ持ちだったから、こんなにたくさんいいの?と問うと
「紡がお世話になってるんだから、構わないよ」
なんて言って笑っていた。
学校の近くまで来ると、さすがに車は乗り入れられないからねと言って、近くにあるコインパーキングに車を入れた。
数々の荷物を手にして歩き出すと、着信が入る。
表示された着信の名前を見ると及川先輩からだったから、桜太にぃにちょっと待ってと声をかけ電話にでる。
【 やっほ~、オレだよ~。今からお昼休憩に入るんだけど、紡ちゃんはいまどの辺かな?】
・・・、か、軽い。
思わず笑いながら現在地を説明する。