第25章 追憶
救急車?
『武田先生?救急車って?誰かケガでもしたんですか?』
救急車を呼ぶほどのケガなら、到着するまでに出来る限りの応急処置が必要なんじゃ?
寝かされてる場合じゃない!
『ケガした人の応急処置をしてあげないと!』
そう言いながら起き上がろうとすると、側にいる澤村先輩に、大いに止められる。
それでも何とか起き上がると、今度は影山にも肩を掴まれた。
影「城戸、1回しか言わねぇから、よーく聞いとけ。救急車に乗るのは・・・お前だボゲェ!」
『・・・・・・・・・・・・・・・なんで?』
影「は・・・ぁっ?!何でってお前!バカか!いや絶対バカだろ!!」
『バカって何よ!バカって言う方がバカなんだからね!!』
武「あ、ちょ、ちょっと影山君?!城戸さんも!!」
澤「2人とも・・・いい加減にしなさい!!」
『・・・はい』
影「ッス・・・」
菅「大地・・・影山はいいとして、紡ちゃんはケガ人なんだからさ。もうちょっとソフトにな、な?」
澤「あ、あぁ、すまん。つい、いつもの勢いで・・・」
・・・お父さんとお母さん。
清水先輩、ナイスネーミングです。
それからは、澤村先輩から今の私の現状と、どうしてこうなっているのかを聞かされて、そこで初めて、救急車が必要なのは私だったのか、と事態を飲み込んだ。
それから、山口君。
澤村先輩や影山から話を聞いて、山口君が私を心配して取り乱した、って聞いた。
それでか・・・
山口君の方を見れば、壁に寄り掛かる月島君の足元で、膝を抱えて小さくうずくまっている。
『山口君?』
私が声をかけると、声をかけた私がビックリするような勢いで顔を上げた。
山「城戸、さん・・・?城戸さん!!」
起き上がっている私を確認すると、山口君は何かから解き放たれたように、駆け出してくる。
山「城戸さん!!城戸さんよかった・・・ホントによかった・・・」
『わっ、とと・・・』
駆けつけた勢いそのままに、山口君は私に抱き着いて、ポロポロと涙をこぼした。
影「山口、おいっ!」
影山が山口君を引っ張ろうとするのを、私は黙って首を振って止めた。
影「だけどお前は今!」
『いい、大丈夫だから・・・山口君、いっぱい心配させてゴメンね?ビックリしちゃったよね・・・ほんと、ゴメンね』