第25章 追憶
武「城戸さん、気がついたんですね?良かった・・・」
私の顔を覗き、武田先生が安堵の息をついた。
よく見れば、武田先生や澤村先輩の他にも、烏野のみんなや、溝口コーチ、それに青城のメンバーが私を囲んでいる。
『みんなで、どうしたんですか?あれ?練習試合は?』
澤「えっ?」
『えっ?あれ?・・・待って?確か・・・及川先輩がピンサーで・・・あれ?でも及川先輩はセッターなのに?影山と日向君の速攻が・・・』
影「城戸、ちょっと落ち着け」
『影山・・・』
武「影山君の言う通りです。城戸さん、一回落ち着きましょう。それから、確認したい事がいくつかあります。いいですか?」
『あ、はい・・・』
促されるままに、何度かゆっくりと深呼吸をする。
何で私は寝かされてるのかも理解できないけど、それでも深呼吸を繰り返しているうちに段々と落ち着けて来た。
『先生、私・・・』
武「落ち着きましたか?では、僕がいくつか質問しますから、それに答えてみて下さい」
そう言って武田先生は、私に今日の日付や、お昼食べた物、その時誰と一緒だったか、今いる場所はどこか、などを聞いてきて、私は少し考えたりしながらもひとつずつ答えていった。
『武田先生、私、浜辺にいたんです』
武「浜辺、ですか?」
『はい・・・そこには、よく分からないけど小さい時の私がいて。桜太にぃもいて。でも、公園にもいたんです』
武「そこには、城戸さんの他にも誰かいましたか?」
『えっと・・・確か・・・私の他にも、中学生の私がいて・・・あと、ハジメ先輩がいて・・・』
及「岩ちゃんが?」
私の言葉に、及川先輩が岩泉先輩を見た。
『はい・・・でも、なぜか・・・よく思い出せないけど、悲しくて、なんだろう。えっと、う~ん・・・』
さっきまで見えていたはずなのに、それが思い出せなくて・・・
岩「無理に・・・無理に思い出さなくてもいい。忘れたままで、いいから」
そう言って岩泉先輩は私の頭をひと撫でして、外を見て来ると言いながら歩いて行ってしまった。
武「意識障害は大丈夫だと思いますが・・・少し記憶が混乱しているようですね」
澤「先生それって?!」
武「えぇ、僕は単なる教師で専門家や医師ではないので何とも言えませんが・・・とにかく、もうすぐ救急車が来ますから、後の事はお任せするしかないでしょう」
