第25章 追憶
足を踏み外して・・・落ちたんだ・・・私。
間一髪で桜太にぃに抱きとめられて、でも桜太にぃは・・・岩場に体を打って、大けがを・・・
じゃあ、あの小さな女の子は・・・私・・・?
・・・何で今まで、忘れてたんだろう。
小さな桜太にぃの出血の多さに、自分の体から血の気が引いていく。
まだ、小さな頃の私が泣いている。
すり抜けてしまうと分かっていても、私は、私は小さな私を抱きしめずにはいられなくて、手を伸ばした。
フワリと小さな私を抱きしめると、今まで見えていた光景が・・・消えた。
また・・・暗闇・・・
どうなってるの・・・これ・・・
どこにいるのかも分からない。
周りを見ても、暗闇ばかりで・・・
ー ハジメ先輩、どうしたんですか?こんな時間に。練習早く終わったんですか?え?公園?・・・はい、大丈夫ですけど・・・分かりました!ダッシュで行きますね! ー
ー 桜太にぃ!ちょっと出掛けて来る! ー
・・・ハジメ先輩?
今度は、なに?
っ・・・また、眩しい!!
ここは、私の・・・部屋、だよね?
それに今の会話は、電話のやり取りみたいだった。
・・・電話の?
確か、ハジメ先輩、とか・・・公園・・・とか・・・
・・・まさか?!
まさか・・・あの日の・・・私?!
ドクドクと音を立てて、胸が苦しくなる。
あの日の電話と、ハジメ先輩と私って・・・
・・・待って!!
行かないで!!
行っちゃダメ!
だから待って!!!!
・・・練習、練習で会える時間もなくて。
そんな時に、ハジメ先輩からかかってきた1本の電話・・・
少しの時間でも会えることが嬉しくて、バカみたいに喜んで、息を切らしながら・・・公園に向かった、あの日・・・
ハジメ先輩と何を話そうか、次に練習休みがあったら行きたい所があるって言ってみようとか、練習試合あったら見に行きたいとか・・・
とにかく、この日よりも少しだけ未来の・・・楽しい時間を夢見て・・・公園に向かってた・・・
なのに・・・そのどれひとつも言えないまま。
終わりを迎えてしまった、あの日・・・
私は私を追いかけて、必死に走る。
どんなに急いでも、あの日の私には追いつかない。
どんだけ走るの早いの私!!
それだけ、ハジメ先輩に会いたかったんだ・・・