第25章 追憶
泣き声が・・・聞こえる・・・
でも、どこからだろう。
真っ暗な空気の中、耳だけを頼って泣き声がする方へと進む。
少し歩くと、小さな光が見えてきた。
泣き声も、近くなって来てる。
手探りで、小さい光を掴もうと手を伸ばしてみる。
もうちょっと・・・
あと、少し・・・・・・捕まえた!
小さな光を掴むと、それは弾け、一瞬にして辺りが明るくなった。
『眩し・・・』
光の眩さに負け、目を閉じる。
しばらく経って、明るさに慣れてくると周りの状況が見えて来た。
ここは・・・浜辺?
独特な香りの風が、私の髪を揺らす。
なん、で・・・こんな所にいるの・・・私。
ー 大丈夫だから、もう泣くなって ー
誰かの声に、その方向を向く。
岩場の近くに・・・人影が、2つ?
泣き声もそこから聞こえてくる。
引き寄せられるように私はそこに向かって歩き出した。
『どうして、泣いているの?』
声を掛けながら近付くと、小さな女の子は、ただずっと泣いている。
もう1人の、女の子より少しお兄さんの方を見ると、顔色も悪く、ケガをしているのか押さえた脇腹の辺りから多くの血を流していた。
『だ、大丈夫?!ケガしてるじゃない!!』
男の子に駆け寄り体を支えようとすると、私の手はその子をすり抜けてしまった。
・・・なに・・・これ・・・?
何で?!
どうなってるの?!
何度も体を掴もうとしても、その度にすり抜けてしまう。
それに・・・
この2人には、私が見えていない・・・
何も出来なくて、私の声も届かない。
ー 父さんこっち!早く! ー
ー待ちなさい慧太!慌ててるとお前も危ないから! ー
・・・慧太?
見覚えのある顔をした男の子が、私の前を走り抜けて行く。
ー 桜太!父さん達呼んで来たからな! ー
・・・桜太?
じゃあ、この女の子は・・・もしかして・・・
ー 桜太にぃ、死んじゃうの?血が、いっぱい出てる・・・ ー
ー 大丈夫だから、もう泣くな。慧太が父さん連れて来てくれたから。血がいっぱい出てるのは、悪いオバケがイタズラしてるから、だよ、紡・・・ ー
!!!
男の子の言葉を聞いて、ハッとする。
思い出した・・・
あのお腹の傷は・・・桜太にぃの・・・
危ないって言われてるのに無理に登って、それで・・・