第25章 追憶
~澤村side~
武「城戸さんも澤村君に怒るなんて、なかなかの度胸がありますねぇ」
体育館内の水道場で、武田先生と肩を並べて雑巾を濯いでいる。
「まぁ、驚きましたけど、マネージャーはそれくらいの勢いがないと。ほら、清水だって・・・あ、清水の場合は静かな怒りみたいな感じで、それはそれで怒らせたら怖い、みたいな」
俺が言うと、武田先生は少し考えて、そう言えばそんな感じですねぇ、とのんびりと笑っていた。
「それにしても、先生まで手伝わなくてもいいんですよ?その、顧問なんだし」
武「炊事、洗濯、掃除は得意分野ですから気にしないで下さい。あと、絆創膏貼ったりトゲ抜きとかも得意ですよ?って、なんか生活じみた事ばかりですが・・・」
「じゃあ、その時はお願いします」
武「えぇ、任せて下さい!」
教師と生徒、とはとても思えない会話をしながら、じゃ、行きましょうか?と最後の1枚を絞った。
及「いた!澤村君!それから顧問の先生も早く来て!!」
この慌てよう、どうしたって言うんだ?
さっきの姿とは全く違い、相当な勢いで走ったのか、乱れた髪を直す余裕もない姿。
とても女子に、キャーキャー言われ囲まれている姿とは同じには思えなかった。
武「青城のキャプテンがそんなに慌てているとは、何があったんです?」
及「紡ちゃんが・・・いえ、城戸さんが倒れた」
紡が?!
突然過ぎる報告に、息が止まりそうになる。
「倒れた・・・って、いったい・・・」
及「説明は後だ、とにかく早く!」
武「行きましょう澤村君!」
「は、はい!!」
濯いだ雑巾もそのままに、俺達は走り出した。
及川の後に続いて体育館へ入ると既に青城や烏野のメンバーで人だかりが出来ていて、案内されるまでもなく紡の居場所が分かった。
武「すみません、通して下さい!」
武田先生が先に人だかりを分けて進み、俺もそれに続いて行く。
山「城戸さん!目を開けてよ!城戸さん!!」
山口の悲痛な叫び声が突き刺さる。
武「落ち着いて下さい。山口君、何があったんですか?」
山「城戸さん、と、スクイズ片付けてたら、ボールが・・・城戸さんオレを庇って、壁に・・・」
山口の言葉に、武田先生が厳しい顔を見せる。
山「うぅっ・・・城戸さん!!城戸さん!!」
動揺しているせいか、山口は紡の体を揺らす。