第25章 追憶

『山口君ゴメン！！』

「え？！うわっ！」

瞬時に何かを察知した城戸さんが、両手を目一杯伸ばし、オレを突き放した。

何がなんだか分からないまま、オレは床に倒れ込んだ。

いったい何が･･･？

危ない！！

「城戸さん！！！！」

目に飛び込んで来た状況に、思わず城戸さんの名前を叫ぶ。

城戸さんは咄嗟に伸ばした手で顔への直撃は免れたけど、でも！！

オレの目の前で、城戸さんは体制を崩したままボールの勢いと共に体育館の壁に全身を打ち付けてから、倒れて行った･･･

城戸さんに当たったボールが、コロコロとどこかへ転がって行く。

『痛･･･』

壁にもたれながら、城戸さんが小さく声を上げた。

体を動かさないまま何度か瞬きを繰り返し、城戸さんは壁に手を付き立ち上がろうとした。

『山口君、大丈夫？ケガはない？･･･ゴメンね、突き飛ばしたりして･･･』

「お、オレは平気！城戸さんこそっ！はい、掴まって？」

こんな時に、オレの心配してる場合じゃないよ！

オレは急いで起き上がって、ゆっくりと立ち上がる城戸さんに手を差し出した。

溝「おいっ！大丈夫かっ？！」

近くにいた青城のコーチが慌てながら走って来た。

持っていたバインダーを近くに放り、城戸さんの体を支えようと手を伸ばした。

『あ、はは･･･なんか今日はツイてないかも。でも、山口君にケガ･･･なく、て、･･･あ、あれ･･･』

オレの手を掴み、何とか立ち上がれたと思ったら、城戸さんの体がふらついた。

『あれ･･･？なんか･･･変･･･』

そう、小さく呟いた後･･･城戸さんの体が、まるで糸の切れた人形みたいに、崩れるように倒れて来た。

「城戸さん！！」

倒れ込んで来た城戸さんの体を抱きとめ、静かに座る。

国「おいっ、紡？！」

岩「紡！！」

及「紡ちゃん？！」

青城の人達も、バタバタと足音をさせながら集まって来た。

オレは城戸さんの顔をそっと覗くと、気のせいかも知れないけど、眉をしかめていて苦しそうにも見えた。

「城戸さん！！大丈夫？！しっかりして！！･･･城戸さん！！」

『ん･･･』

溝「おい！しっかりしろ！！及川！烏野の顧問呼んで来い！！急げ！！」

及「はい！！！」

物凄い勢いで青城のキャプテンが走って行く。

そんな中オレは、城戸さんの名前を呼び続けた。