第25章 追憶
『山口君?ひとつだけ間違ってる所、軌道修正していい?』
「間違ってる、ところ?」
軌道修正って、どういう意味だろう。
なんとなく城戸さんの顔を見れなくて、俯いたまま返事だけは返した。
『あのね、私は大きい声でなんて言ってたか思い出してみて?』
「なんて・・・って?みんな大好き!でしょ?」
言われた事に素直に返すと、城戸さんが瞬きを繰り返しながら、わざわざ言わなくていいからと照れている。
・・・城戸さんのそういう所、すごいカワイイ、と思う。
普段は影山に対抗出来ちゃうくらい元気いっぱいなのに、たまに見せるこういう感じが・・・なんというか、こそばゆくて、オレはドキドキする。
『あの、だからさ、私はみんなって言ったでしょ?』
「え?あ、うん。だから、コートの中のみんな・・・でしょ?」
みんな、っていう言葉を出す度に、自分はその中の人間じゃないんだと思い知らされる気がして、ヘコむ。
オレがもっと、例えばツッキーみたいにカッコよくて、バレーも上手かったりしたら、自信満々に、みんなってオレも入ってる?とか、聞けるんだろうけど、なぁ・・・
『山口君、顔、上げて?』
えっ・・・う、うわっ・・・
城戸さんは言いながら、両手をオレの顔に添えた。
想像以上に近い場所にある城戸さんの顔を、直視出来なくて、思わず目を逸らした。
『何度も言うけど、私はみんなって言ったでしょ?それはコートの中の6人はもちろんだけど、ベンチにいる人達も含めて、みんなだよ?』
思いがけない城戸さんの言葉に、そこで初めて視線を合わせた。
「ベンチにいるみんな、も?」
『そう。だから、山口君の事も、ちゃんと大好き!なんだからね?』
オレの事も、ちゃんと・・・?
うわ・・・
うわわわわわわっ・・・!!
ち、違うぞ!
待て待て待て待て!!
落ち着け、オレ!!
オレの事が大好き・・・じゃなくて!
オレも含めたみんなの事が!だぞ!
止まらない動揺をおとなしくさせる為に、静かにゆっくり深呼吸をして・・・
オレの顔に添えられたままの城戸さんの手に、右手を重ねる。
「オレも・・・オレも城戸さんのこと、ちゃんと大好きだよ!」
言えた・・・!!
い、言っちゃったよ!・・・オレ!