第25章 追憶
私はカゴを持って、バラバラに置いてあるスクイズボトルを集め歩いた。
これで全部、かな?
辺りを見回し、見落としがない事を確認して、本数を数えてみる。
・・・あれ?
1本足りない?
2度、3度数え直しても、やっぱり足りない。
別の場所にでも置き忘れしてるのかな。
・・・探してくるか。
そう思って顔を上げると、山口君が自分のスクイズを握りしめているのを見つけた。
『おーい!山口く~ん!』
山「え?あ、な、なに?」
考え事をしていたのか、ただ声をかけただけなのに物凄く肩を跳ね上げられた。
『・・・それ、まだ使う?もし、もう使わないんだったら回収しちゃいたいんだどな?』
スクイズボトルを指差しながら、山口君の方を見上げる。
山「あ、ゴメン!!今持ってく!」
パタパタと足音を立てながら、山口君が駆け寄ってくる。
『ありがとう山口君。何かゴメンね、急がせちゃって』
山「ううん、大丈夫!オレがボーッとしてたんだし」
『よし、これで全部揃った!じゃあ私、これ洗って来ちゃうね』
言いながらカゴに手をかけると、山口君が慌て出した。
山「え?!お、オレも手伝うよ!城戸さんケガしてるんだし!」
『これくらい私にも手伝わせて?この足のせいで、後半なんにも出来なくて・・・悔しかったから』
本当は、最後の最後までみんなと一緒にいたかった。
けど、自分の不注意でやってしまった事を後悔しても、遅い。
山「城戸さんは、頑張ってたじゃん。1人で敵陣のベンチにいるのに、声張り上げて応援とかしてたし・・・みんな大好き!・・・とか」
『やっ、やめてよ山口君っ!今それ掘り起こすのダメ!!』
思い出すと恥ずかしくて、温度が上がってくる顔を横に向けた。
山「何で?オレはその時、みんなが・・・羨ましかったよ・・・」
羨ましい?
山「オレはベンチにいたから、城戸さんがそう叫んだ時、コートの中のみんなが・・・羨ましくて。あぁ、オレもあの中にいたらなぁ・・・ってさ」
少し、遠くを見る様な目をして、俯きがちに山口君が零す。
あの中に、いたらなぁ・・・か。
『山口君?ひとつだけ間違ってる所、軌道修正していい?』
山「間違ってる、ところ?」
『あのね、私は大きい声でなんて言ってたか思い出してみて?』
山「なんて・・・って?みんな大好き!でしょ?」