第25章 追憶
試合終了の整列も終わり、私は、私を迎えに来てくれた武田先生と共に丁寧にお礼の挨拶を済ませ烏野のベンチへと戻って来た・・・んだけど・・・?
『な・・・んですかこの凄い惨状は?!』
私が青城のベンチに行く前は、少なくともキレイにはしてあった。
菅「いや、あの、紡ちゃん?」
『スガさんも!3年生1人だけベンチ残ってんだからしっかりして下さい!』
菅「紡ちゃん・・・それ、オレ結構刺さるヤツ・・・」
澤「ははっ、スガが紡に怒られるとは」
『大地さんも笑ってる場合じゃありません!借りた備品はキレイにして返すのが鉄則ですよ!・・・はい、雑巾』
ニコリと笑って、雑巾を渡す。
澤「え、雑巾?」
『当たり前です。こんな惨状を清水先輩1人に片付けさせるおつもりで?』
笑顔を崩さず澤村先輩に言うと、一瞬息を飲み水道場へ走って行った。
田「ぎゃはははっ!あの大地さんをパシるとは、さすがお嬢!」
お腹を抱えて笑い出す田中先輩に、チラリと視線を送る。
『田中先輩?』
田「お、おう?」
『使ったタオルほっぽらかさない!シャツ脱ぎ散らかさない!・・・お菓子口に入れながら着替えない!!』
田「い、いいい、今すぐに!!」
全くもう・・・大きなため息を吐きながら、他に散らかした場所はないかと周りを見る。
月「小さい犬ほどよく吠える・・・」
『月島君、聞こえてるからね』
月「はいはい」
『それから、月島君は散らかしたりしてないけど、言いたい事がたーっくさんあるから。それは学校戻ってからにする。日向君も一緒にね』
月「日向と?」
そう言いながら月島君は、あからさまに不機嫌な顔を見せる。
『言っとくけど、不機嫌な顔してもダメだから。そろそろ見慣れて来たし。はい、月島君もゴミ拾って片付けて』
月島君の手に無理やり袋を握らせ、背中を押す。
影山と日向君がいない。
・・・逃げられたか。
逃げ足もすっごい早いんだから。
さてと、私も片付け手伝わないとね。
怒るだけ怒って何もしないなんて言われたら、嫌だし。
今の私に出来る事は・・・
そう考えながらチラリと自分の足を見る。
これしかないかな?
片付けるために壁際に置かれた荷物の端々にスクイズボトルが点在している。
カゴはここにあるのに、どうしてあんなにバラバラな場所に置くかな・・・