第25章 追憶
『いや、えっとねぇ、わざわざ口に出さなくていいよ恥ずかしいから』
何度も繰り返し言われると、ホントに恥ずかしくなってきて顔の温度が上昇する。
『あの、だからさ、私はみんなって言ったでしょ?』
山「え?あ、うん。だから、コートの中のみんな・・・でしょ?」
言いながら山口君は、どんどん俯きしょげていく。
なんだろう、このネガティブな感じ。
自分に自信なくて、前を見る事を自分から避けてるような・・・
『山口君、顔、上げて?』
私は両手で山口君の顔に触れ、そっと上を向かせた。
『何度も言うけど、私はみんなって言ったでしょ?それはコートの中の6人はもちろんだけど、ベンチにいる人達も含めて、みんなだよ?』
山「ベンチにいるみんな、も?」
『そう。だから、山口君の事も、ちゃんと大好き!なんだからね?』
視線を合わせ、まっすぐ前を向いて山口君にそう告げる。
山「オレも・・・オレも城戸さんのこと、ちゃんと大好きだよ!」
顔に触れている私の手に自分の右手を重ね、山口君がそう言った。
『ありがとう山口君。でも良かった。私って山口君と話をする時、だいたいお説教じみた事ばっかりだから嫌われちゃうんじゃないかとハラハラしてた』
わざとらしく大げさに肩を竦めると、山口君は、そんな事ないから!と力いっぱいに言う。
『でも、こんな風にまっすぐ見つめられて、大好きだよ!とか言われるとドキドキしちゃった。世紀の大告白されたみたいで』
山「え?!」
「ストレートに気持ちを投げてくれる山口君の彼女って、きっと幸せ者だね?」
山「あ、あのさ、えっと・・・か、彼女なんかいないよ」
顔を真っ赤にさせながら山口君がたどたどしく私に話す。
・・・何でそれだけ言うのに真っ赤になってるんだか分からないけど。
『彼女、いないの?てっきりいるものだと思ってた。山口君ってこんなに優しいし、素直にいろいろ話してくれるのに勿体ないなぁ。みんな見る目がないんだねぇ・・・ちょっとだけ、ネガティブな所もあるけど』
山「え?ネガ・・・」
『何でもないよ?さ、遅くなっちゃうから片付けしちゃお?』
山「そうだね。あ、オレが持つってば!」
『甘やかさないでって。コレくらいホントに大丈夫なんだから』
そう言ってカゴ持ち、2人で立ち上がりかけた時。
ー 危ねぇっ!!! ー