第7章 嵐の足音
~及川side②~
寒さに悴んでくる手が痛む。
痛みの理由は分かっている。
でも、あんなに幸せそうに笑っていた紡ちゃんを傷つけた岩ちゃんが悪いんだ。
・・・あの日・・・
部活終わって、いつもの様に岩ちゃんと帰ろうとしたら、岩ちゃんが呼び出されてるってのが聞こえた。
気がつくと岩ちゃんはいなくなってるし、伝言して来たヤツを捕まえて聞いたら
« 岩泉呼んでた子?あぁ、北川第一の女の子だよ。、なんかこぅ、小さくて小動物的な可愛い子 »
それを聞いて、オレは嫌な予感にまとわりつかれ、コッソリ覗きに言った。
嫌な予感は的中した。
あの子は・・・
偶然にも、岩ちゃんがいつも気にかけてた女の子だ。
ま、最終的にオレがいた事バレちゃったけど、その時オレは・・・ホントは心から良かったね~なんて・・・言えなかったんだよ・・・
中学3年になったばかりのある日、朝練で指を痛めたオレは保健室に立ち寄り手当を受けた。
そのあと教室に戻る時、キョロキョロしながらあっちへ行ったり、こっちへ来たりしている1年生を見かけた。
まさかの迷子?なんて思ったから、オレは声をかけた。
「ねぇキミ?さっきから挙動不審だけど・・・もしかして迷ってる?」
その子は声をかけられたことに驚きながらも振り向いた。
『はい・・・。移動教室なんですけど、第2音楽室がわからなくなってしまって・・・』
教材を抱き抱えながら、その子は言った。
「え?第2音楽室?そもそもソコ、隣の校舎だよ?」
オレが言うと、その子もビックリして慌てだした。
『教えてくれてありがとうございます!では・・・』
そう言って、今にも駆け出して行きそうなのを呼び止め、抱えていた教材を受け取る。
「ついでだから、連れてってあげるよ。」
『でも・・・』
「大丈夫大丈夫。オレは保健室から戻るとこだから、あとちょっとくらい遅れても平気だから、ね?」
『ホントにありがとうございます』
半ば強引に納得させ、目的の教室まで連れていった。
廊下を歩きながら、彼女の名前やクラスなどを聴いてるうちに到着した。
何度もありがとうとお礼を言われ、なんてことないよ、と手をヒラヒラさせてオレは教室に戻って行った。
数日後、紡ちゃんはバレー部に入ってる事が分かった。
へぇ~、あの子、リベロなんだ?
お、ナイス反応!