第24章 孤独と絶望感
澤「スガ・・・お前は子供の帰りを待つお母さんか?」
「何でだよ!」
清「帰ってくるの遅い!どこで何してた?なんて言ってたら、お母さんって言われても仕方ないわね」
テキパキと仕事をしながら清水までもがそんな事を言う。
澤「ま、スガが聞きたいのは・・・紡の事だろ?」
図星をつかれ、ウッ・・・と言葉に詰まった。
縁「城戸さんは、まだ少し痛むけど大丈夫だって笑ってましたよ。向こうのコーチに、いろいろ面倒見て貰ってるからって」
澤「そうそう、いっぱい応援するから頑張って下さいとも言ってたな」
まぁ、そうして貰えることを条件にあっちに連れていかれたんだけど。
あの腫れ方は、痛そうだったしなぁ。
田「確かにお嬢、声張り上げて日向に説教くらわせてたからな」
澤「敵陣でアレだけ叫ぶ事が出来るとは、なかなかの大物だよ。そうだ、アレだけ叫んでたら、喉乾いてんじゃないのか?」
大地が言うと、みんなしてそれもそうだと頷いた。
「だけど、さすがに女子の鞄を勝手に開けるのはマズイだろ?・・・見られたら嫌だって思う物とか入ってると、あれだし・・・」
大地と2人で、どうしようかと頭を悩ませていると、オレ達の肩をポンッと清水が叩いた。
清「一応言っとく、私も城戸さんと同じ女子」
眼鏡をキラリと反射させ、清水が笑う。
澤「じゃ清水、頼める?」
大地がそう言って、清水が遠慮がちに紡ちゃんの鞄からマグボトルとタオルを取り出して、オレ達の所に戻って来る。
清「私、このまま届けに行ってくる。けど、大丈夫かしら」
ベンチの手前に集まっている青城のメンバーに目をやりながら、清水が少し困惑していた。
武「でしたら、僕が届けましょう。1度向こうに顔出してますし」
話を聞いていた武田先生が、清水からそれを受け取ろうと手を伸ばす。
「先生待って!こういう時って、女の清水の方が紡ちゃんも変な気を使わなくていいし、その方がいいかと」
そうですか?と言う武田先生に頷き、オレは清水に顔を向けた。
「清水。向こう行ったらさ・・・すみません、城戸がお世話になってますって言って、笑って」
清「え?笑う?」
「そう。清水の営業スマイル見せればスンナリ通れるはずだから」
清水の背中を押しながら、そう言って送り出す。
本当は、オレが届けたいんだけどね。